作品案内

〈特集上映〉ケリー・ライカートの映画たち 漂流のアメリカ

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上映日程: 4月27日〜終了未定

現代アメリカ映画の最重要作家ケリー・ライカートが紡ぐ、4つのロードサイダーズ・ストーリー。アメリカン・ドリームが失われた世界にさすらう者たちの、語るに足る、ささやかな抵抗――。

1994年に最初の長編『リバー・オブ・グラス』を発表以来、各国映画祭で激賞されながらも、大手スタジオとは一定の距離を保ち、真にインディンペンデントなスタイルと制作体制を静かに貫き続ける現代最高の女性監督ケリー・ライカート。
最新作『First Cow』はA24が製作・配給し、各国メディアを席巻。『オールド・ジョイ』から始まる“オレゴン・シリーズ”の最新作にあたるその公開を前に、エバーグリーンの輝きを放つライカート監督のキャリア初期傑作4本を一挙に公開いたします。
自分と同じくらい孤独な他者とつながろうともがきながら、それぞれのユートピアを求めて、荒野を彷徨う登場人物たち。その過程で積み重ねられる、言葉にならなかった感情や何かが変わるはずだった行動、そのぎこちない関係性の数々は、繊細で親密な手触りをもって、私たちの感性を深く揺さぶる。

▶︎作品紹介

『リバー・オブ・グラス 2Kレストア版』RIVER OF GRASS
撮影:ジム・ドゥノー 編集:ラリー・フェセンデン
出演:リサ・ドナルドソン(リサ・ボウマン名義)、ラリー・フェセンデン、ディック・ラッセル
1994年/アメリカ/スタンダード/カラー/76分  (C)1995 COZY PRODUCTIONS

楽園リゾート都市マイアミのほど近く、なにもない郊外の湿地で鬱々と暮らす30歳の主婦コージーは、いつか、新しい人生を始めることを夢見ている……。20代最後の年、故郷に戻ったライカートが、逃避行に憧れ、アバンチュールに憧れ、アウトローに憧れた、かつての思春期の自身に捧げた「ロードの無いロード・ムービー、愛の無いラブ・ストーリー、犯罪の無い犯罪映画」。撮影許可料が払えず、警察から幾多の圧力を受けながら、ゲリラ撮影で完成させた珠玉のデビュー作。


『オールド・ジョイ』OLD JOY
脚本:ジョン・レイモンド 撮影:ピーター・シレン 音楽:ヨ・ラ・テンゴ  製作総指揮:トッド・ヘインズ
出演:ダニエル・ロンドン、ウィル・オールダム、ターニャ・スミス
2006年/アメリカ/ヴィスタ/カラー/73分  (C)2005,Lucy is My Darling,LLC.
★ロッテルダム国際映画祭タイガー・アワード(最高賞)受賞、ロサンゼルス映画批評家協会インディペンデント・フィルム賞 受賞

もうすぐ父親になるマークは、ヒッピー的な生活を続ける旧友カートから久しぶりに電話を受ける。キャンプの誘い。 “戦時大統領”G・W・ブッシュは再選し、カーラジオからはリベラルの自己満足と無力を憂う声が聞こえる……。ゴーストタウンのような町を出て、二人は、ポートランドの外れ、どこかに温泉があるという山へ向かう。『リバー・オブ・グラス』から12年――貯めた資金をもとに完成の目処なくスタートした企画だったが、ライカートの評価を一躍高めた2作目。

『ウェンディ&ルーシー』WENDY and LUCY
脚本:ジョナサン・レイモンド 撮影:サム・レヴィ 製作総指揮:トッド・ヘインズ
出演:ミシェル・ウィリアムズ、ウィル・パットン、ジョン・ロビンソン、ウィル・オールダム
2008年/アメリカ/ヴィスタ/カラー/80分  (C) 2008 Field Guide Films LLC
★カンヌ国際映画祭パルム・ドッグ賞受賞

『オールド・ジョイ』に惚れ込み、ライカートに自らアプローチしたミシェル・ウィリアムズを主演に迎えた、一人と一匹の異色のバディが織りなす彷徨譚。ほぼ無一文のウェンディは、愛犬ルーシーと共に新しい生活を始めるため、仕事を求めてアラスカへと向かっている。しかし、途中オレゴンのスモールタウンで車が故障。さらに警察に連行されてしまい、ルーシーは行方不明に……。ライカート自身「これは私の物語でもある」と語る、世界の悲惨と個人の尊厳を描き切った代表作。

『ミークス・カットオフ』MEEK’S CUTOFF
脚本:ジョナサン・レイモンド 撮影:クリストファー・ブローヴェルト 製作総指揮:トッド・ヘインズ
出演:ミシェル・ウィリアムズ、ゾーイ・カザン、ポール・ダノ、ブルース・グリーンウッド
2010年/アメリカ/スタンダード/カラー/103分 (C)2010 by Thunderegg,LLC.
★ヴェネツィア国際映画祭SIGNIS賞 受賞

アメリカのアイデンティティの根源たる西部開拓神話が、ライカートのオルタナティブな視点とスタイルによって見事に解体された歴史的一作。1845年のオレゴン。広大な砂漠を西部へと向かう白人の三家族は、近道を知っているという案内人・ミークを雇うが、長い1日が何度繰り返されど、目的地に近づく様子はない。道に迷った彼らを襲うのは飢えと互いへの不信感だった……。実在の人物と史実をベースに、当時の女性たちが密かに綴った日記を丹念に読み込み、現代の寓話として生々しく再構築した意欲作。

配給:グッチーズ・フリースクール、シマフィルム/提供:シマフィルム、東映ビデオ

▶︎2024年4月27日(土)よりアンコール上映

《当日料金:1作品あたり》一般:1,800円(リピーター割引有:半券提示で1,500円)/大学・専門学生:1,300円(学生証の提示が必要)/シニア:(60歳以上)1,300円/会員:1,200円(会員証の提示が必要・同伴1名まで同額割引)/障がい者割引:1,200円(手帳の提示が必要・付添いの方1名まで同額割引)/高校生・中学生:1,200円(生徒手帳・通学定期券の提示が必要)/3歳〜小学生:1,200円
毎月1日映画サービスデー:一律1,200円/毎週月曜日サービスデー:一律1,200円

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