会期2004年7月17日(土)〜8月13日(金)の4週間  劇場シアター・イメージフォーラム

プロ(127分)
オテサーネク
監督・脚本:ヤン・シュヴァンクマイエル/ヤン・シュヴァンクマイエル/出演:ヴェロニカ・ジルコヴァー、ヤン・ハルトゥル、ヤロスラヴァ・クレチュメロヴァー/2000年/127分/カラー/チェコ+イギリス/PG-12/ベルリン映画祭受賞

◎長篇四作目。チェコの民話にもとづく寓話。子供のいないホラーク夫妻は隣人の娘すらうらやましく思っていた。夫は妻のあまりの悲嘆ぶりに、気をひこうと、木の切り株を赤ん坊の形に削り妻に見せる。妻は切り株に駆け寄り、本物の赤ん坊のように世話をし始める。妻の異常な反応に驚きながらも、子供が突然現れるのは変だからと、山小屋に置いていくよう説得する。すると次の日、夫は隣人に「おめでとう」と言われる。妻が妊娠したことを告げたというのだ。あわてた夫は妻を問いただすと、彼女は平然としてお腹に入れるためのクッションを夫に見せる。なんと、9ヶ月分のクッションを用意しているのだ。偽装妊娠はエスカレートし、まるで本当のことのように陣痛まで起こる。痛みを堪えながら山小屋へ急ぎ、切り株を抱きしめる妻の姿になすすべのない夫は、一人アパートに戻り、隣人夫妻に、病院で男の子が産まれたと嘘をつき、名前を聞かれ、「オテサーネク」の民話の連想から、とっさに「オティーク」と名前をつけてしまう。

プロ(83分)

悦楽共犯者
監督・脚本:ヤン・シュワンクマイエル/音楽:ブラザーズ・クエイ、他/出演:ペトル・メイセル、ガブリエラ・ヴィルヘルモヴァー、バルボラ・フルザノヴァー/1996年/83分/カラー/チェコ+イギリス+ドイツ/ロカルノ映画祭受賞

◎六人の登場人物が人目を避け、抑えがたい欲望につき動かされて、さまざまな“自慰機械”の発明に専念する様を、台詞はいっさい使わず、音楽と様々な触覚的な効果音のみで描く長篇三作目。この作品のきっかけは、プラハの警察博物館で偶然見かけた手作りの“自慰機械”(不運な自慰主義者からの押収品)だった。この機械がシュワンクマイエルに、快楽のオブセッション、そして欲望と自由について多大なるインスピレーションを与えたのだ。1970年頃に短篇として企画され、当時のチェコの政治体制下では制作不可能だったが、25年後、長篇として完成した。突発的に高まるオペラや交響曲の一節、異様なまでに強調された日常的騒音が混ざり合う魅惑的なサウンドトラックは、ゴダール作品で知られるフランソワ・ミュジー、『ストリート・オブ・クロコダイル』のブラザーズ・クエイらによる。また、登場人物の女性ニュースキャスターのアナ・ヴェトリンスカは、チェコのTVで活躍する現役の人気美人キャスター。

プロ(96分)

ファウスト
監督・脚本:ヤン・シュワンクマイエル/出演:ペットル・ツェペック、ヤン・クラウ/1994年/96分/カラー/チェコ/チェコ映画祭受賞

◎ファウスト伝説をもとに、チェコの伝統的な人形劇や、粘土、錬金術などを用いたアニメと実写を融合させて現代のメフィストフェレスを描く、長篇二作目。
ゲーテに代表される「ファウスト」像は、世俗的欲望に溺れた人間が悪魔によって地獄に堕とされるという民間伝説がもとになっている。16世紀末、劇作家C・マーロウによる戯曲「フォースタス博士」でファウストは、さらなる知識を求め自己の拡大を求める肯定的な人物として描かれ、教会的偏見を脱したヨーロッパ自我のめばえと評価された。
シュワンクマイエルの『ファウスト』の主人公は、マーロウ的ともゲーテ的とも異なっている。さしたる欲望ももたないごく普通の男が、ふとした偶然により何かに操られるように罠にはまっていく悲劇。誰もがいとも簡単に操られてしまう恐ろしさ。秘められたメッセージは、超現実的なキャラクターと語り口にもかかわらず極めて現実味を帯び、言いようのない迫力をもって迫ってくる。まさにシュワンクマイエルの独壇場だ。

プロ(計79分)
石のゲーム
1965年/9分/カラー/オーストリア映画祭受賞

◎時計の蛇口から刻々と生まれる二つの石の不思議なゲーム。

ワイズマンとのピクニック
1969年/11分/カラー

◎人間抜きのピクニック。洋服はフルーツを頬張り、チェス盤はゲームに興じる。

アナザー・カインド・オブ・ラブ
1988年/4分/カラー

◎ヒュー・コーンウェルのミュージッククリップ。

肉片の恋
1989年/1分/カラー

◎愛し合う二つの肉片。ロマンチックにダンスを踊り、小麦粉にまみれて抱き合う。

フローラ
1989年/0.5分/カラー

◎ベッドに縛られた人間。身体は野菜で出来ている。次第に野菜がいたみはじめ、蛆虫が這う。

スターリン主義の死
1990年/10分/カラー

◎粘土のスターリンの顔が切り裂かれ、中から新たな政治家が出てくる皮肉たっぷりな風刺劇。

フード
1992年/17分/カラー

◎食事をめぐるエロティックでシュールな欲望のありさまを朝昼晩の三部作で描く。

プラハからのものがたり
監督:ジェイムス・マーシュ/出演:ヤン・シュヴァンクマイエル/1994年/26分/カラー

◎シュヴァンクマイエルの妄想世界のルーツを自ら解きあかす。

プロ(85分)
アリス
監督・脚本・美術:ヤン・シュヴァンクマイエル/原作:ルイス・キャロル/出演:クリスティーナ・コホウトヴァー/1987年/84分30秒/カラー/スイス+ドイツ+イギリス/アヌシー映画祭受賞

◎最初は短篇の連作として制作され、3年の歳月をかけてシュバヴァンクマイエル初の長編作品。ルイス・キャロルの「不思議の国のアリス」を下敷きにしている。散らかった部屋で、少女アリスが人形で"アリスごっこ"をしていると、ガラスケースの中のウサギが突然動き出した。慌てて駆け出していった白ウサギの後を、アリスは驚きながらも追いかけることにした。するとアリスは、インクやクッキーを食べて大きくなったり小さくなったり、自分の流した涙で溺れそうになってしまったり、白ウサギにはメアリー・アンと間違われ、奇妙な動物たちに襲われたりと、次々と不思議な出来事に遭遇するのだった。剥製のウサギが動き出し、靴下が芋虫になり、机の引き出しが不思議の世界に繋がるなど、実写とアニメを組み合わせ、シュヴァンクマイエルのいかがわしく、悪趣味な妄想が噴出する。緻密さのあまり1年に15分ほどしか作れないというシュヴァンクマイエルのアニメーション。その類い希なるテクニック、諧謔に彩られた悪趣味なイマジネーションの世界を存分に堪能できる作品。

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