会期2004年7月17日(土)〜8月13日(金)の4週間  劇場シアター・イメージフォーラム

チェコ・スロヴァキア(現在、チェコ共和国)は伝統的に人形劇、映像を取り入れたパフォーマンス・シアターであるラテルナ・マギカの盛んで、それに伴いイジィ・トルンカ,カレル・ゼマン、ヘルミーナ・ティールロバーなどを世界に輩出したアニメーション王国でもある。

ヤンは1934年、プラハに生まれる。
ラテルナ・マギカなど数々の劇場で舞台美術家・演出家として活躍した後、1964年クラートキー・フィルム・プラハ(トルンカスタジオ)で、オブジェクトアニメ(人形・粘士・日用品などを使った立体アニメ)を撮り始める。 最初の作品は『シュヴァルツェヴァルト氏とエドガル氏の最後のトリック』('64年)。
ルドルフII世にオマージュを捧げた『自然の歴史』('67年)や、アルチンボルド的な素材や粘土(クレイ)の動きが圧倒的な存在感を示す『対話の可能性』('82年)など、数々の優れた短編を撮り、当時の共産党政権下でブラックリストに載りながらも(1968年の『庭園』は20年間上映禁止処分を受ける)、国外の映画祭で圧倒的な評価を受け、活動を続ける。
キートンのスラプスティックコメディやカフカ的不条理感に満ちた『部屋』('68年)、サッカー熱をモンティ・パイソンのテリー・ギリアムのような切り絵と粘土で表現した『男のゲーム』('88年)など、ブラックなユーモアも特徴的。
1987年、初の長編『アリス』を撮り、元ストラングラーズのヒュー・コーンウェルの『アナザー・カインド・オブ・ラヴ』('88年)のビデオクリップを撮るなど国外での活動の場も広がり、1989年のビロード革命後も、『ファウスト』('94年)、『悦楽共犯者』('96年)と順調に長編を撮り続けている。
最新作は『オテサーネク』('00年)は息子として育てた木の切り株が食べ物や動物や果ては両親までも飲み込んでいってしまうというチェコの民話を、『アリス』('87年)のように少女の視点から、現代の不妊の夫婦の物語として描くグロテスク・ユーモア溢れる傑作。

ヤン・シュヴァンクマイエルは戦闘的なシュルレアリストとしてチェコの伝統的な美学を継承しながらも独自の怪奇と幻想性を極限まで追求したアニメーション作家として、またアニメーションの技術を取り入れた独創的な劇映画作家として世界のアートシーンに大きな影響を与え続けている。 またその創造活動は映画にとどまらず、オブジェ、コラージュ、セラミックなどの美術造形作品を多数作り、画家であるエヴァ・シュヴァンクマイエロヴァーとともに世界各地で大規模な展覧会を開催している。

今年で70歳になるヤンだが、最新の劇映画を準備中だと言う。

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