ー壮大なスケールで描く、少年たちの小さな冒険
 ある日、川に流れてきたそれまで見た事もない真っ白なボール。大人たちに聞いても誰も知らないその謎の球を追って、少年ビリグとその友だちの3人はモンゴルの大地を馬とバイクに乗って駆け抜ける。目指すは、北京-。
 本作『モンゴリアン・ピンポン』は、誰もが身に覚えのあるどこか懐かしい子供時代の冒険譚。大きなこころざしを持って出かけたけれどやがて募ってくる不安な気持ちや、「わかってくれない」大人たちへの口に出せない反発心、やがて訪れる友との別れといった、私たち一人一人が心のどこかにしまった気持ちが、内モンゴルで暮らす少年たちの日常を通してよみがえる。
 子供たちの小さな冒険と成長を描いた『冬冬の夏休み』(侯孝賢監督)や『友だちのうちはどこ?』(アッバス・キアロスタミ監督)に連なる、少年冒険映画の最新版が誕生した。

ー若き俊英監督を魅了したモンゴルの自然と人々
 監督は、中国映画の新鋭ニン・ハオ。昨年『瘋狂的石頭(クレージー・ストーン)』(06)が中国映画としては上半期最大の大ヒットを記録した。本作では淡々としたテンポでこみあげてくるようなおかしさを演出している。
 中国山西省出身の彼は、モンゴル特有の文化と生活に深く魅了され、長編第3作目の舞台にこの地を選んだ。出演者はすべて実際にこの地に暮らす人々を起用。その伝統的な暮らしぶりだけでなく、中国国家への意識や遊牧から定住への生活の移行といった、彼らの直面する問題をもさりげなくリアルに浮かび上がらせている。