ベトナム北部の山岳地帯に住む少数民族モン族の少女、パオ。彼女は父親と弟、そして育ての母キアと暮らしている。父とキアの間には子供ができなかったので、代わりにやってきた女性シムがパオと弟を産んだのだ。しかし、シムは身を引いて家を出て行き、キアが子供たちを育ててきた。子供たちもキアを慕い、パオは時々訪ねてくる産みの親シムには心を開かなかった。

 成長したパオは、市場で知り合った青年チューに心ひかれる。笛を吹くのが得意な彼は、パオの家の前で美しい音色を奏でて彼女への思いを伝えた。あるとき、パオは母には内緒で、チューと一緒にお祭りに出かけた。お祭りの人ごみの中で、パオは母が父ではない男性と一緒にいるところを目撃してしまう。普段は着ない晴れ着に身を包み、家族には見せない表情で笑うキアを見て動揺するパオ。

 家に帰ったパオは母を問いただす。「母さんはどうすればいい?」と悩むキア。その夜、笛の音を聞いたパオが窓から目撃したのは。塀の外にやってきて息子と同じ笛を吹くチューの父親の姿だった。母の秘密の交際相手はチューの父だったのだ。

 そして、ある日キアがこつ然と姿を消す。持ち物は川原の岩の上に置かれたままだった。村人全員が総出で捜索し、ついに川の中からキアのスカートが見つかる。キアの弔いがすむと、パオの父が飲む酒の量はだんだんと増え、目に見えて体が弱っていった。そして、酒に酔うとキアのことだけでなく、シムのことを口に出すようになった。

 父を助けるため、と決心したパオは実の母シムを探す旅に出る。遠く離れた町の住所を訪ね、誰も頼る者がいない都会で、出稼ぎ労働者を手伝ってなんとかバス代を手にし、シムの元に着く。シムは娘との再会を喜んだが、彼女にはすでに別の生活があった。パオは父の待つ山に戻る。

 帰り道、バスが山の中の休憩所にとまった。店に入る乗客たちのあとについていったパオが偶然目にしたのは、信じられない光景だった・・・