作品案内

〈特集上映〉ヴィジョン・オブ・マフマルバフ『苦悩のリスト』『子どもたちはもう遊ばない』

上映日程: 12月28日〜終了未定

イランの巨匠 モフセン・マフマルバフ監督率いる “マフマルバフ・ファミリー”
アフガニスタンとイスラエル ― 中東の最前線でいま起こっている矛盾と葛藤を描き出した最新ドキュメンタリー2本が同時公開


2023年10月のハマス襲撃以降、悪化の一途をたどっているパレスチナ~イスラエル情勢。その恐怖と憎悪は伝搬し、レバノンやイランといった中東諸国にも拡がりつつある。その危ういバランスにある中東情勢を紐解く上で、イランの巨匠 モフセン・マフマルバフ率いる「マフマルバフ・ファミリー」が2本のドキュメンタリー映画を産み出した。 『苦悩のリスト』(監督:ハナ・マフマルバフ) は、2021年の米軍撤退を契機にしたタリバン再侵攻で、生命の危機に晒された約800人のアフガニスタンのアーティストや映画関係者の救出劇を描いたドキュメンタリー。モフセン・マフマルバフ監督とマフマルバフ・ファミリーが、限られた“リスト”を目の前に苦悩する過程をつぶさに捉えた本作は、2023年の山形国際ドキュメンタリー映画祭のクロージング作品に選出。

『子どもたちはもう遊ばない』(監督:モフセン・マフマルバフ)は、イスラエルの古都・エルサレムを舞台に、長らく続くパレスチナ問題の深層を探るドキュメンタリー。映画のロケハンでエルサレムを訪れたマフマルバフ監督が、在イスラエルのパレスチナ系の住人たちを中心に様々な人々に出会いながら、相互理解の難しさと解決への一縷の望みを見出そうとするドキュメンタリー。2024年のプサン国際ドキュメンタリー映画祭でワールドプレミア上映され、イスラエル~パレスチナ情勢への危機感がさらに高まっていたタイミングということもあり、上映後は若い観客たちかが熱心に質疑応答に参加した。

シネマ・カメラからスマートフォンへ 映画は何を描くべきか?何を伝えるべきか? 今、起こっていることへの“責任”を具現化した2作品

『サイクリスト』『パンと植木鉢』『カンダハール』等、これまで世界中の映画祭で評価を受けてきたモフセン・マフマルバフ監督。娘のハナ・マフマルバフ監督もまた『ハナのアフガンノート』『子供の情景』等で若い頃から評価を受けてきたが、父娘はシネマ・カメラからスマートフォンに持ち替えてこの2作品を撮り上げた。
これまでの重厚なフィクションとは全く異なる手法ながら、共にスマートフォンのみで撮影したフットワークの軽さと、映画一家が積み上げてきた確かな手腕によって、中東の複雑な情勢や感情を近距離で体感できる2作品が同時公開される。マフマルバフの“ヴィジョン”とあなたの“現在”とが密接に繋がるアクチュアルな映画体験を。


◉『苦悩のリスト』監督:ハナ・マフマルバフ
2023/イギリス、アフガニスタン、イラン/67分/カラー/DCP/英語、ペルシャ語
出演:モフセン・マフマルバフ/マルズィエ・メシュキニ/メイサム・マフマルバフ/ハナ・マフマルバフ
撮影:ハナ・マフマルバフ/プロデューサー:メイサム・マフマルバフ/製作:マフマルバフ・フィルム・ハウス
原題:The List
2023 プサン国際映画祭 正式出品/2023山形国際ドキュメンタリー映画祭 クロージング作品

●2021年 米軍撤退~タリバン再侵攻 膨大なリストの中から、誰を助けるのか
2021年、アフガニスタンからのアメリカ軍撤退を契機にタリバンが再侵攻を開始。国外脱出しようとする市民で空港はパニックに陥った。7月には全土を掌握したタリバンからの迫害や処刑等、生命の危機に直面したアーティストや映画製作者を救うための救援グループが発起。モフセン・マフマルバフ監督はじめファミリーも、約800人の「リスト」を元に各所への呼びかけしてゆく中、リストから人数を絞らなければならないという苦渋の選択を迫られる...。
●現代の「シンドラーのリスト」が突き付ける残酷な状況を“家族のスマートフォン”で撮り切った緊迫のドキュメンタリー
空港周辺の市民たちがパニックに陥る中、遠く離れたロンドンで交渉に当たるマフマルバフ・ファミリーは電話やメールで対応しながら、刻一刻と迫るリミットと避けられない“選択”に感情を揺さぶられてゆく。その過程をスマートフォンで撮影した映像は、歴史的な緊迫した状況の記録であると同時に、家族それぞれの信頼と愛情を描き出すものだった。伝えるべきこととツールの機動性が合致した結果生まれた、最新系のポリティカルドキュメンタリー。


◉『子どもたちはもう遊ばない』監督:モフセン・マフマルバフ
2024/イギリス、イスラエル、イラン/62分/カラー/DCP/英語、アラビア語、ヘブライ語
監督:モフセン・マフマルバフ
出演: アリ・ジャデ/ベンジャミン・フライデンバーグ/アディ・ニッセンバウム/エルサレムの市民たち
撮影:シャディ・ジャミル・ハビブ・アラー、モフセン・マフマルバフ/編集:マルズィエ・メシュキニ/音響:ハナ・マフマルバフ/プロデューサー:メイサム・マフマルバフ/製作:マフマルバフ・フィルム・ハウス
原題:Here Children Do Not Play Together
2024プサン国際映画祭 正式出品/2024サンパウロ国際映画祭 正式出品

●2023年 分断が極限化するパレスチナとイスラエル 憎しみと恐れが沸点に達した今、エルサレムの深層から見えてくる重大な真実
映画のロケハンでエルサレムを訪れたマフマルバフ監督は「長年続くイスラエルとパレスチナの紛争に解決の糸口はあるのか」を探るために、迷宮のような旧市街を訪ね歩く。街角に佇む老人、パレスチナ系ティーンのダンスグループ、ユダヤ系の若者等、様々な人々に出会ってゆく過程で、エルサレムに住む少数のパレスチナ系とイスラエルという国家の摩擦、そしてその根源的な問題が浮かび上がってくるのだが...。
●旅行vlog的なフットワークの軽い映像から浮かび上がるエルサレムの日常から見えてくる紛争の根源とかすかな希望
2023年10月のハマス襲撃後の緊張感も見え隠れするエルサレムの街をさまよいながら、その迷宮の深層に潜っていくマフマルバフ監督の目には何が映るのか。気軽な旅行記のようなスマートフォンによる撮影にもかかわらず、確かな構成と映画的な探究心によって、エルサレムの重層的な複雑さと一方で若者たちが体現する微かな希望をそのまま描き出すことに成功した野心的ドキュメンタリー。

▶︎2024年12月28日(土)より公開予定
配給:ノンデライコ

《当日料金》一般:1,900円/大学・専門学生:1,400円(学生証の提示が必要)/シニア:(60歳以上)1,400円/会員:1,300円(会員証の提示が必要・同伴1名まで同額割引)/障がい者割引:1,300円(手帳の提示が必要・付添いの方1名まで同額割引)
毎月1日映画サービスデー:一律1,300円/毎週月曜日サービスデー:一律1,300円

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