イントロダクション
ある日偶然見つけた大量の映画チラシと一冊の本。そこには日本各地の映画館を巡ったエッセイが綴られていた。「私」にとっては、一度も訪れたことのない場所で上映された、一度も見たことのない映画のはずなのに、なぜか初めて見た気がしない。「私はこの映画を知っている。私は昔、確かにこの映画を見た……。」自分のものではない記憶の正体を探るべく、「私」は本に記された劇場を訪れる旅に出る。各地の盛り場の風景と興行の痕跡、移動する身体から、個人的かつ集合的な日本映画史を記述する「メディア考古学」的映画制作の試み。二部作を一挙上映します。(佐々木友輔・杵島和泉)
上映作品
『ファントムライダーズ』(60分、2025年)
共同監督:佐々木友輔、杵島和泉
出演:大久保藍、中村友紀、牧小雪、リサーチ・脚本:杵島和泉、脚本・撮影・編集:佐々木友輔、照明:田中哲哉、藤森このみ、メイク:梶川真奈、イラスト:Clara、ロゴデザイン:蔵多優美(ノカヌチ)、音楽:田中文久、チェロ:木下通子、主題歌:「マイラヴセプテンバー」(作詞・作曲・歌:にゃろめけりー、編曲:田中文久)、資料提供:門村裕明、協力:佐藤洋一、湖海すず、平岡美歩、井上柊、鳥取大学演劇サークル劇団あしあと、Clara、熕X友華、ロケ協力:鳥取県立博物館、岩手県公会堂
スクリーンの傍に立つ一人の活動弁士。彼女は著者名も奥付もない奇妙な本『幽霊騎手』を手に取り、そこに記された「自分のものではない記憶」についての物語を語り始める。鳥取の映画館シネマスポット フェイドインで見た『恋する惑星』の記憶。神戸の新開地で、映画館とスケート場が一体になった風変わりな劇場を訪れた記憶。香林坊の映画館主が構想する、新たな娯楽施設の記憶……。活動弁士は鳥取、神戸、金沢、熊本と、過去に存在した各地の映画館を巡る時間旅行を続け、やがて今回の旅の終着地・盛岡で、隣の座席にいた一人の映画観客と言葉を交わす。
上映作品
『ファントムライダーズ2』(80分予定、2025年)
共同監督:佐々木友輔、杵島和泉、出演:大久保藍、中村友紀、牧小雪、リサーチ・脚本:杵島和泉、脚本・撮影・編集:佐々木友輔、照明:田中哲哉、藤森このみ、メイク:梶川真奈、イラスト:湖海すず、ロゴデザイン:蔵多優美(ノカヌチ)、ED映像:伊賀太亮、佐々木友輔、ストーリーボード:小澤虹色、スチル:ささふじはなみ、古森南帆、音楽:田中文久、主題歌:「メモリーテープ」(作詞・作曲・歌:にゃろめけりー、編曲:田中文久)、上映支援(クラウドファンディング):木原三代志、米子シネマクラブ、協力:村瀬謙介(小取舎)、高木善祥(SHEEPSHEEP BOOKS)、門村裕明、佐藤洋一、井上柊、ロケ協力:喜楽座、宇陀キラ倶楽部、レンタルハウスPOP
偶然見つけた一冊の本『幽霊騎手』に誘われて、かつて誰かが見た映画/訪れた映画館の記憶を巡る旅に出かけた大学生ハル。彼女のためにタイムマシンを発明し、その出発を見届けた友人フユの元に、ある日、時間旅行の先駆者プショル教授からのメッセージが届く。教授によれば、ハルが旅先で行方をくらまし、今も捜索が続いているが何の手がかりも見つかっていないのだという。フユは『幽霊騎手』のコピーを持ち出し、教授と共にハルの救出を計画。奈良、群馬、愛知、和歌山、北海道、長崎へと、新たな旅が始まる。
トークゲスト
9月13日(土)17:50からの回|渡邉大輔氏(映画史研究者・批評家)
9月20日(土)17:50からの回|岡田秀則氏(フィルムアーキビスト)
渡邉大輔(わたなべ・だいすけ)
1982年栃木県生まれ。映画史研究者・批評家。跡見学園女子大学文学部准教授。専攻は日本映画史・映像文化論・メディア論。映画批評、アニメ批評、映像メディア論を中心に、文芸評論、ミステリ評論などの分野で活動を展開。単著に『イメージの進行形』(人文書院)、『明るい映画、暗い映画』(blueprint)、『新映画論 ポストシネマ』(ゲンロン)、『謎解きはどこにある』(南雲堂)、『ジブリの戦後』(中央公論新社)。9月に『セカイ系入門』(星海社新書)を刊行予定。
岡田秀則(おかだ・ひでのり)
1968年愛知県豊田市生まれ。 フィルムアーキビスト。国立映画アーカイブ主任研究員。映画フィルムの収集・保存や上映企画の運営などに携わり、2007年から映画関連資料のアーカイビングと映画展覧会のキュレーションを担当。 また内外の映画史を踏まえた論考、エッセイを多数発表している。単著に『映画という《物体X》』(立東舎)、編著に『そっちやない、こっちや 記録映画監督・柳澤壽男の世界』(新宿書房)、監修書に『昭和の映画絵看板』(トゥーヴァージンズ)など。
関連企画/展覧会
「見る場所を見る5──イラストで見る、鳥取の映画館&レンタルビデオショップ史」
「見る場所を見る」は、鳥取県内にかつてあった映画館とレンタルビデオ店を調査し、イラスト制作や映画・ドキュメンタリー制作など芸術表現を通じた記憶の復元を試みるプロジェクトです。今回の展覧会では、5年間にわたる活動の集大成として、Claraによるイラスト作品を網羅的に展示すると共に、佐々木友輔と杵島和泉による地方映画史研究の最新成果を紹介します。過去を掘り下げることを通じて現在や未来を見透す「メディア考古学」の方法を参照し、ローカルな観客たちが生きた記憶を日本映画史に重ね描きすることを試みます。
■企画|佐々木友輔、杵島和泉、Clara
■日程|2025年9月12日(金)〜9月24日(水)
開催時間|12:00-20:00
※9月18日(木)は休廊。最終日9月24日(水)は17:00まで。
■場所:新宿眼科画廊(東京都新宿区新宿5-18-11)https://www.gankagarou.com/show-item/202509mirubasho/
■入場:無料
関連書籍|『「見る場所」のメディア考古学──鳥取から日本映画史を描き重ねる』
展覧会の開催に併せて、「見る場所を見る」のこれまでの成果をまとめた書籍を出版します。Claraが描いた映画館&レンタルビデオ店のイラスト約60点に加え、佐々木・杵島が執筆したテキストや年表、トークイベントの採録などを網羅的に収録。鳥取の豊かな映画文化を伝え、讃える活動を続けてきたプロジェクトの集大成となる書籍です。
■書名|「見る場所」のメディア考古学――鳥取から日本映画史を描き重ねる
■編著|佐々木友輔、杵島和泉、Clara
■トーク採録|石原香絵、板倉史明、大久保遼、かつしかけいた、近藤和都、佐藤洋一、田中晋平、吉田明広、渡邉大輔
■出版社|小取舎
■協力|SHEEPSHEEP BOOKS
■販売予定価格|2,970円(税込)



