作品案内

追悼・松本俊夫 ロゴスとカオスのはざまで/映像の発見ー松本俊夫の時代

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上映日程: 12月9日〜12月22日

《特集上映》追悼・松本俊夫 ロゴスとカオスのはざまで

2017年4月12日、映像作家・松本俊夫がこの世を去った(享年85歳)。武満徹、粟津潔、大島渚、東松照明、磯崎新、寺山修司、一柳慧・・・・・・映像作家として60年代を彩る豊かな才能と交流し、映像理論家として松竹ヌーヴェルヴァーグをはじめ当時生まれつつあった革新的な映像表現に大きな影響を与えていた松本俊夫。記録映画、実験映画、劇映画、ビデオ・アートをボーダレスに行き交い、どの分野においても先駆的な映像表現を遺した。長編デビュー作の『薔薇の葬列』(1969)では、時代の状況と作家性を見事に結晶化させ新たな映画の時代の到来を証明した。

本特集では、長編『薔薇の葬列』『修羅』『十六歳の戦争』に加え、映像作家としての原点である前衛的なドキュメンタリーから、70年代にいち早く取り組んだビデオ映像を駆使した作品など、松本俊夫の作家としてのコアとなる作品を上映。松本の高度な論理性をバックボーンとしながら、その思考の深淵から沸き出るカオティックなエネルギーを充満させた作品群を通して、松本が我々に残した偉大な遺産の概観を試みる。

《長編作品》

薔薇の葬列
1969年/35mm/モノクロ/スタンダード/107分/配給:ダゲレオ出版
脚本・監督:松本俊夫/撮影:鈴木達夫/音楽:湯浅譲二
出演:ピーター、土屋嘉男、小笠原修、城よしみ ほか
ゲイボーイ、ヒッピー、学生運動、ハプニング・・・。1969年当時の風俗をリアルなドキュメンタリー的手法で作品に取り込んだ長編デビュー作。そのセンセーショナルな内容と、この映画でデビューを果たした当時16歳のピーターの妖艶な美しさも加わって、大きな衝撃として受け止められた。キューブリックの『時計仕掛けのオレンジ』に大きな影響を与えた(※ハーバード大学フィルムアーカイブ)とも言われ、いまや世界的にカルト的な人気作品となっている。

修羅
1971年/35mm/パートカラー/スタンダード/134分/配給:ダゲレオ出版
脚本・監督:松本俊夫/原作:鶴屋南北「盟三五大切」/撮影:鈴木達夫
出演:中村賀津雄、唐十郎、三条泰子 ほか
「仮名手本忠臣蔵」の外伝的な物語である鶴屋南北の歌舞伎狂言「盟三五大切(かみかけてさんごたいせつ)」をもとに、松本俊夫が脚本を手がけた異色の時代劇。全編夜の闇、しかも登場人物12人中、9人が死に果てるという凄惨な怨念劇を朝倉摂の舞台劇を思わせる大胆なセット、名キャメラマン、鈴木達夫による黒を基調にハイコントラストの美しいモノクロ画面で描き上げた。

十六歳の戦争 ※現存するオリジナルフィルムにつきプリントのキズ、痛み、退色があります、ご了承ください
1976年/35mm/カラー/シネマスコープ/94分/サンオフィス作品
脚本・監督:松本俊夫/脚本:山田正弘/音楽:下田逸郎/撮影:押切隆世
出演:秋吉久美子、下田逸郎、嵯峨美智子 ほか
8月7日の豊川大空襲の慰霊祭を背景に、若い男女の出会いを描いた作品。秋の野原を駆け、湖のほとりで悲しみに沈み、みずみずしい裸体で水と戯れる秋吉久美子の姿が目に眩しい。当時売れっ子のフォークシンガー下田逸郎の「陽の当たる翼」に載せて描いた映像詩である本作品は、いまも残る戦争の傷跡を凝視し、無為の死を余儀なくされた多くの死者たちに捧げた鎮魂歌でもある。

松本俊夫実験映画特集
映像作家としての原点である前衛的なドキュメンタリーから、70年代にいち早く取り組んだビデオ映像を駆使した作品など、松本俊夫の作家としてのコアとなる活動を特集。

Aプログラム 詩としての映像 86分
西陣(1961年/16mm/25分)
石の歌(1963年/16mm/25分)
母たち(1967年/デジタル/36分)

Bプログラム 視想の錬金術 97分
つぶれかかった右眼のために(1968年/デジタル/13分)
エクスタシス〈恍惚〉(1969年/16mm/10分)
メタシタシス〈新陳代謝〉(1971年/16mm/8分)
エクスパンション〈拡張〉(1972年/16mm/14分)
モナ・リザ(1973年/16mm/3分)
ファントム〈幻妄〉(1975年/16mm/10分)
アートマン(1975年/16mm/11分)
ホワイトホール(1979年/16mm/7分)
スウェイ〈揺らぎ〉(1985年/16mm/8分)
エングラム〈記憶痕跡〉(1987年/16mm/13分)

Cプログラム 反復と変容 103分
色即是空(1975年/16mm/8分)
アンディ・ウォーホル=複々製(1974年/16mm/23分)
エニグマ〈謎〉(1978年/16mm/3分)
コネクション(1981年/16mm/10分)
リレーション〈関係〉(1982年/16mm/10分)
シフト〈断層〉(1982年/16mm/9分)
気配(1990年/デジタル/20分)
ディシミュレーション〈偽装〉(1991年/デジタル/20分)

Dプログラム 最初期の記録映画たち 67分
銀輪(1955年/35mm/10分/東京国立近代美術館フィルムセンター所蔵作品)
300トントレーラー(1959年/デジタル/26分)
安保条約(1959年/16mm/18分)
白い長い線の記録(1960年/デジタル/13分)

《長編ドキュメンタリー作品》
映像の発見=松本俊夫の時代 筒井武文監督作品

10年に及ぶ撮影を経て紡ぎ出された“ロゴスとカオスの人”=松本俊夫。映像作品の引用と作品の関係者や時代を象徴する批評家の膨大なインタビューによって、その全貌が語られる。松本の怜悧な批評眼と卓越した論理性が、その破壊的な前衛感覚と混沌とした官能性の間でせめぎ合う!!───その狭間で揺れる、眩暈のような700分間の記録。
学生運動、安保闘争、アングラ・ムーブメント、日本映画の斜陽、ATGの試み、ビデオ・アートからメディア・アート、批評の時代から脱批評へ・・・・・・。1950年代から2000年代。社会・政治・文化・メディアなど多方面において激動であった時代が、松本俊夫という一人の作家を通して浮かび上がる。

プロデューサー:武井登美/監督:筒井武文/撮影:瀬川龍、小野寺真、鈴木達夫/照明:市川元一/録音:山崎茂樹/助監督:加地耕三/編集:山崎梓/サウンドデザイン:森永泰弘/タイトルデザイン:上村浩二/製作:プロダクション・バンブー

第1部 記録映画篇(137分)
戦後の復興期、青春期の映画との出会いから、実験工房、円谷プロと組んだ『銀輪』(1955)を皮切りに、映画人の戦争責任を問う批評家として『記録映画』の創刊、テレビやラジオ、演劇と活動を広げながら、不遇の時を経て、『母たち』(1967)でベネチア国際映画祭グランプリを受賞し、劇的な復活を遂げるまで。「外界の客観的な記録」という枠組みを疑い、新たな地平を切り開いた初期の記録映画時代。
主な登場人物:藤原智子(記録映画作家)、湯浅譲二(作曲家)、観世栄夫(能楽師・俳優)、佐々木守(脚本家)、一柳慧(作曲家)、工藤充(プロデューサー)

第2部 拡張映画篇(153分)
学生運動や映画祭粉砕、「反万博」が吹き荒れた激動の時代。松本はその渦中にコミットしつつ、「ワンプロジェクター・ワンスクリーン」という映画館の上映方式を超えた、映像と観客の関係を変えるエクスパンデッド・シネマ(拡張映画)に取り組んだ。第一批評集『映像の発見』の刊行と多大な反響、石堂淑朗や大島渚との論争など、怒濤の季節を雄弁に物語る『つぶれかかった右眼のために』(1968)を経て、やがてその奔流は『スペース・プロジェクション・アコ』で頂点に達する。
主な登場人物:西嶋憲生(映像研究者)、高山英男(編集者)、かわなかのぶひろ(実験映画作家)、波多野哲朗(映画評論家)、金井勝(映画監督)、坂尻昌平(映画研究者)

第3部 劇映画篇(140分)
戦後イタリアのネオレアリズモ、フランスのヌーヴェル・ヴァーグに衝撃を受け、劇映画も視野に収めた松本。その記念すべき第一作『薔薇の葬列』(1969)から『修羅』(1971)、秋吉久美子のデビュー作ながら一時公開中止となった『十六歳の戦争』(1973)、そして『ドグラマグラ』(1988)へと至る劇映画の系譜。当時、中学生で『薔薇の葬列』論を発表した中条省平の怜悧な観察眼と証言、『ドグラマグラ』の撮影鈴木達夫との関係や、共同脚本を手がけた大和屋竺との確執。虚構と現場=現実の境で苦闘しながら、松本が見つめていたものとは何か。
主な出演者:中条省平(フランス文学者)、渡辺哲也(映画監督)、菊池滋(プロデューサー)、押切隆世(撮影監督)、佐々木伯(映画監督)

第4部 実験映画篇(109分)
映像の本質と可能性を根源的に思考し、追求した実験映画でのテーマや流れを作品とともに松本自らが解説しつつ、80年代末に訪れた作品の変化、そして90年代以降の沈黙の意味を明らかにする。2006年に川崎市市民ミュージアムで開催された特集上映「映像の変革」の関連企画展「眩暈の装置:松本俊夫をめぐるインターメディアの鉱脈」でのインスタレーションも記録。自作に登場する作家本人。虚構と現実が侵蝕しあう無限背進のなかで、『ディシミュレーション 偽装(遺作)』(2006)は松本の死とともに新たな意味を持つことになるだろう。
主な登場人物:川村健一郎(元川崎市市民ミュージアム学芸員)

第5部 映画運動篇(162分)
松本俊夫と同様に映像作家で批評家である監督筒井武文が松本の書斎を訪ね、第Ⅰ部から第Ⅳ部までで語られてきた批評や映画に関する疑問を投げかける。芸術運動、映画批評、戦争責任、作家としての威信をかけた大島渚との論争、万博問題、共闘し別れた同志、自らの創作活動について。取り壊しを間近に控えた自宅書斎を背景に、思考を吟味するように紡がれていく松本の言葉。2005年に発掘された『銀輪』(1955)についても再び言及。人間の意識と感性を不断に拡大していく終わりなき映画=芸術運動。やがて少年の夢はイメージの波間へと回帰してゆく。

《上映スケジュール》
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※フィルム上映の作品は現存するオリジナルプリントにつきキズ、痛み、退色がありますことをご了承ください。

当日料金:一般1,500円/学生・シニア1,200円/会員1,100円

《トークショー開催》
12/09(土)21:00の回『実験映画Bプロ』上映前。ゲスト:西嶋憲生さん(映像研究者)
12/17(日)16:30の回『映像の発見ー松本俊夫の時代』第四部上映後。ゲスト:筒井武文監督、金子遊さん(映像作家・批評家)
12/18(月)14:00の回『薔薇の葬列』上映後。ゲスト:ヴィヴィアン佐藤さん(美術家・ドラァグクイーン)
12/21(木)21:00の回『実験映画Aプロ』上映後。ゲスト:生西康典さん(演出家)

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