ペーター・クーベルカ フィルモグラフィW

『アーヌルフ・ライーナー』


『ポーズ!』

自信にモザイク Mosaik im Vertrauen
35ミリ/16分/白黒・カラー/1955
●ここに起こっている感動とは、クーベルカが完璧にやり遂げたこととは、「通常の映画」とは比べものにならないほど強烈である。物語は石の積み重ねのとうに互いが絡み合って謎めいている。(アルフレッド・シュメラー)

アデバー Adebar
35ミリ/1.5分/白黒/1957
●映像は極端な白黒ハイコントラストによるダンスのショット。映像と動きと繰り返すサウンドが驚くべき正確さで組み立てられているために、イメージは剥奪され白黒の本質だけが残るのである。(フレッド・キャンパー)

シュベカター Schwechater (独語読みではシュベヒャター)
35ミリ/1分/カラー/1958
●オーストリアのビール会社、シュベカター・ビールのコマーシャル映画。わずか1分だが、編集に多くの歳月を費やして依頼者を怒らせた逸話がある。白黒のポジとネガと、赤の単色カラーで構成される数コマ単位のショットと、ビールの泡の抽象像。

アーヌルフ・ライナー Arnulf Rainer
35ミリ/6.5分/白黒/1960
●きっかり24秒の長さと、きっかり1フレームの短さで配列された、真っ黒と真っ白なフレームによって完璧に作り上げた映画である。この贅肉を取り払った映画の本質は、意味を奪うことではなく、意味の可能性を多様に暗示させる。(F.キャンパー)

われらのアフリカ旅行 Unsere Afrikareise
16ミリ/12.5分/カラー/1966
●アフリカで狩猟旅行をしている記録映像。白いハンターたち、原住民、動物、自然、ビルなどが交互に現れ、これらの素材となるイメージは強烈に目に焼き付いてくる。丹念に編集された音と映像を伴って、観客はこの目に焼き付いた映像を解読する。

ポーズ! Pause!
16ミリ/12分/カラー/1977
●『ポーズ!』は無我夢中にさせる作品である。作品の強烈さと完璧さをもって、調和がとれすぎて膨れあがった観客の期待を解消させた。新しく生まれたばかりの赤裸々な、新しい作品を我々に授けてくれた。(ジョナス・メカス)


ペーター・クーベルカ バイオグラフィ
PETER KUBELCA1934年ウィーン生まれ。少年時代はウィーン少年合唱団に所属した。1964年にオーストリア・フィルム・ミュージアムを共同で創設。1967年に「芸術としての料理」の講座を始め、以降ヨーロッパで最も著名な料理研究家となる。1970年に、NYでアンソロジー・フィルム・アーカイヴスをジョナス・メカスらとともに開設。1978年よりフランクフルト、シュテーデル美術学校映画学部教授。1980年オーストリア国民栄誉賞を受賞。
*左上の写真はジョナス・メカス監督の『リトアニアへの旅の追憶』(1972年)から。

クーベルカは、スタン・ブラッケイジ、マヤ・デレンらとともに、1950年代に新しい映像を世に提示した戦後実験映画のパイオニアとして、映像教育分野や実験的な映像作家の間でその業績は頻繁に語られています。しかしながら、わが国では長らく観賞の機会がありませんでした。それは、彼が映画フィルムの純粋性を第一のポリシーとしているからにほかなりません。現在もビデオへのコピーが許可されないばかりか、細心の注意を込めて作られた映画プリントが世界に何本か存在するのみです。

この伝説化した映画作家の人間的魅力を伝えるエピソードも豊富にありました。実験映画の世界で活躍する一方、ヨーロッパにおける最も著名な料理研究家であり、彼の映画製作ゼミではその授業の一環として学生が料理をつくることが取り入れられていること、ジョナス・メカスの親友であり1970年にはメカスらとともにニューヨークでアンソロジー・フィルム・アーカイヴスを開設したこと、そしてメカスの代表作『リトアニアへの旅の追憶』(1972年)の第3部には主要な人物として登場しており、映画の中にその人柄が印象的に刻みつけられていました。


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