イメージフォーラム・フェスティバル
1987-2011一般公募部門傑作セレクション
プログラムA/視覚の揺らめき(映像のマジック)
  • 驚きを画面の中に持続させ、静かな展開ながら挑戦的である『遣取』、日本の文化的な記憶を喚起し、観客の想像力を刺激する点が高く評価された『狐火』。歴代作品からは、映像メディアの持つ魅力を高め、無辺の幻想へ誘う作品をセレクト。(5作品87分)
  • 『tone』

    ●水野勝規/2005/ビデオ/カラー/10分
    ●イメージフォーラム・フェスティバル2004年度制作助成作品
    ●流れては消えていく風景。写真のように見えるが、ゆっくりとした時間が流れている。5つの風景からなるこの作品は、まるで海辺で佇んでいるような感じを受ける。
  • 『狐火』

    ●土屋由貴/2010/ビデオ/カラー/30分
    ●イメージフォーラム・フェスティバル2011優秀賞
    ●岩肌のようにざらついた黒い背景を前に、ふんわりと動き回る白い炎の群れ。時には左右対称に、時には上下対称に、浮かんだり落下したりする。その無秩序のようで秩序立ったシュールで摩訶不思議な絵模様が紡ぎ出す多様なイメージは見るものの想像力を刺激する。やがて画面の中央に紅蓮の炎が立ち上り、白い煙で覆われていく。
  • 『冬虫夏草』

    ●上岡文枝/1993/16ミリ/カラー/26分
    ●イメージフォーラム・フェスティバル1994審査員特別賞
    ●カランコロン、カランコロン。軽やかな下駄の音が時を刻んでいく--。上岡家の墓。天上の月。浴衣姿の女性。散る桜。そして、おばあちゃんの写真。一瞬一瞬は堆積し、川面に漂う花びらのように塞ぎ止められる。やがて、雪に死んだセミ。ノスタルジックな映像と音を紡ぎながら生あるものを抱く時空間を、一種幻覚的なイメージまでに高める。
  • 『遣取』

    ●小室萌佳/2011/ビデオ/カラー/10分
    ●イメージフォーラム・フェスティバル2011寺山修司賞
    ●キネティックアートを彷彿とさせる映像作品。ゴボゴボという泡音とともに現れる多彩なオブジェは、進化の過程かそれともただ停滞しているだけなのか。大きな展開の変化は見られないが、不思議な現象を発見したときの感動が10分間持続する。細部と全体を交互に見比べ、我々の知り得る世界観と強引に結びつける鑑賞法も一考されたし。
  • 『FADE into WHITE #2』

    ●五島一浩/2000/ビデオ/白黒/11分
    ●イメージフォーラム・フェスティバル2001大賞
    ●モノトーンで描かれたCGアニメーション。無人の病院の内部を車輪のついた「視線」が徘徊する。日光をふんだんに浴びた巨大な待合室。リノリウムの床に反射した光が印象的な廊下。窓越しにはゆっくりと落ちるボール。スムーズな視点移動と、一貫してストイックで記号的な時間構成が"気配"の演出に奏功している。
プログラムB/じぶんだけの表現(エネルギッシュな個性)
  • 完成度としては粗削りだが、若い息吹に満ちたパワフルな存在感が魅力的な『17歳』と個性派映画。アンチ・ウェルメイドな『2つの旅とコーヒー』、女性作家台頭期90年代を代表する『かげのあかり』、ミニマリズムの極致『日日日常』。(4作品90分)
  • 『17歳』

    ●佐々木優/2010/ビデオ/カラー/22分
    ●イメージフォーラム・フェスティバル2011優秀賞
    ●20歳からみた17歳は遠い昔である。「17歳。みっくんが好きだった。いつも怖かった。」「感情のテンションがジェットコースターみたいだった。」作者自身が過去を自演するドラマ。高校時代の派手メイクを再現し、あの頃を語る。同性への憧れ、無為に過ごす日常の嫌悪、老いの恐怖…。熱病の様な時期をストレートに描く。
  • 『2つの旅とコーヒー』

    ●水本博之/2004/ビデオ/カラー17分
    ●イメージフォーラム・フェスティバル2005奨励賞
    ●実写のパートとアニメーションのパートそれぞれの主人公が旅を続ける世界。登場人物は、支離滅裂な独白を続け、怪物はいつも突然出現し、「組織」の人間達や幽霊達が目的不明のまま抗争を止めず、世界は常にまとまりを欠いている。ラストに2つの旅は出会うが、彼らもまた決して飼いならされない怪獣であった。
  • 『かげのあかり』

    ●齋藤ユキヱ/16ミリ/カラー/15分
    ●イメージフォーラム・フェスティバル1994入選
    ●台所で出目金を飼っている女。あるとき女は、白い布で頬かぶりした謎めいた男に出会う。強姦されるイメージ。女は、水槽から小さなグラスに出目金を分け、火を点ける。溢れる流しの水に濡れながら、何かに憑かれたかのように服を脱ぐ女。狂気、不安、怯えといった内面のメタファーとして物語は提示され、ささくれだったイメージは見るものを突き刺す。
  • 『日日日常』

    ●能瀬大助/2000/16ミリ/カラー/36分
    ●イメージフォーラム・フェスティバル2000入選
    ●アパートの一室の極小の領域をかき集め、日常の時空間を覆い尽くしてしまう物語。日ごろ目に止めない生活の「跡」を記す部分を集合させ、つぶやきで満たし、そして、今撮影しているフィルムのひとコマひとコマを埋めていく作業に勤しんでいる。日常における飽和状態の感覚。映画のラスト、それを目のあたりにする。
プログラムC/遊泳禁止
  • 『遊泳禁止』

    ●大木裕之/1989/8ミリ/カラー/89分
    ●イメージフォーラム・フェスティバル1990審査員特別賞
    ●「つめた」から「すいた」、「すいた」から「わかさ」まで移動する22日間の記録と、その途中に挿入される作者の過去のフィルムとで構成される日記的映画。時間と空間を切り取ることへの異様なまでの執着に、作者のフィルムに対する切実な思いが滲み出ている。
プログラムD/フィルム・アイ(映画の生成)
  • フィルムの粒状性の微妙な質感を生かし、鉱山跡の圧倒的な風景を切り取った『EDEN』。建築をキャンバスにした『hierophanie』と『部屋/形態』、フィルムならではの表現『昼顔海岸』と『MONGOLIAN PATY』、技術的洗練の頂点『変形作品第5番』。( 6作品87分)
  • 『昼顔海岸』

    ●コタキマナブ/2002/8ミリ/カラー/3分
    ●イメージフォーラム・フェスティバル2003奨励賞
    ●8ミリフィルムは基本的には複製できない複製メディアであり、作家はまるで彫刻を扱うような感覚でこのメディアと接している。この作品もその彫刻的要素を極限まで追求した労作である。いわゆる編集とは異なる観点から、縦からも横からも数コマ単位で継ぎはぎされたフィルムに光が当たった刹那、昼顔と海岸が出会う。
  • 『hierophanie』

    ●大門未希生/2002/ビデオ/カラー/9分
    ●イメージフォーラム・フェスティバル2003入選
    ●今は島全体が廃墟である軍艦島で撮影された作品。かつて生活の灯のあった建物はコンクリートの墓碑と化した。ある夜、突如現れた光源が建物の部屋を一つずつ照らしていく... 儀式的行為を固定カメラで記録し、デジタル合成で光束を組み合わせて見知らぬ建物へのレイクイエムを奏でる。タイトルの意味は「秘儀」。
  • 『EDEN』

    ●磯部真也/2011/16ミリ/カラー/15分
    ●イメージフォーラム・フェスティバル2011優秀賞
    ●かつては地上の楽園として繁栄しただろう廃墟の巨大団地。そのとある一室、古いテープレコーダーから歌が流れ、灰皿には吸いかけの煙草。ティーカップに注がれた紅茶はまだ暖かい…。作者は執拗に朽ちた建築物を徘徊する。季節が過ぎ、豪雪に埋もれてもなおカメラは廻る。生活の消えた場所から物語を紡ぎだす祈りのドラマ。
  • 『部屋/形態』

    ●石田尚志/1999/16ミリ/カラー/7分
    ●イメージフォーラム・フェスティバル1999特選、2000レティナ・フェスティバル準大賞
    ●部屋の片隅、窓から差している琥珀色の陽。壁面に投影された影が浸食し合い、増殖するにつれて、立方体としての部屋の形態は、やがて実際の壁面とドローイングによる仮想の平面が造り出す視覚の揺らめきに変貌する。鑑賞者の知覚作用により形態が変わる驚異の部屋。2.5次元のアニメーション作品。
  • 『変形作品第5番<レンブラントの主題による変形解体と再構成>』

    ●黒坂圭太/1986/8ミリ(ビデオ版)/カラー29分
    ●イメージフォーラム・フェスティバル1987入賞
    ●一枚のレンブラントの絵を素材に、自由自在な分解・再生を加えた視覚的作品。映画の原点、明と暗の世界...それはレンブラントの重要なモチーフでもある。
  • 『MONGOLIAN PATY』

    ●万城目純/1996/8ミリ/カラー/24分
    ●イメージフォーラム・フェスティバル1997大賞
    ●いくつかの長いワンショット映像によって構成された一見シンプルな作品だが、後半はひとコマひとコマの撮影速度を微妙に変化させる手廻しシャッターで撮影された。その結果、モンゴルの大自然は擬人化された風景に変貌し、わずかに動くものはユーモラスに見えてくる。作者による「ダンスとしての映画シリーズ」の一編。
プログラムE/見せたい想い(可視化された記憶)
  • スチールの連なりとしての“映画の原点” を現出する「コマ撮り映画」と、記憶がテーマの傑作群。実家の工場のコマ撮り映像で幼少時代の複雑な感情を観客に共有させる『THE 梅屋商店』は、これらのハイブリッド版といえる。(11作品90分)
  • 『TOKIO HOUSE』

    ●石田純章/1990/16ミリ/カラー/7分
    ●イメージフォーラム・フェスティバル1989エクスペリメンタル・イマジネーション賞
    ●今となってはもう失われてしまった懐かしい場所を、ネガティヴとなって反転した少女が駆け抜ける。複雑なテクニックを駆使し、記憶のぬくもりが伝わってくる作品になっている。この作家なら当然ではあるが、高い完成度を持つ。
  • 『roundscape』

    ●中西義久/1996/ビデオ/カラー/4分
    ●イメージフォーラム・フェスティバル1997審査員特別推奨賞
    ●まるで円回転するジェットコースターに乗って風景を眺望したような壮快な視覚世界。見晴らしのよい場所からぐるぐるとパンし、公園のゴミ箱、送電線の鉄塔などを捉えると、猛烈な勢いでズームイン。さらにその周りを360度回転するという二重の躍動感。道路標識が横断歩道を歩く、なんてユーモアも楽しい。
  • 『SLIDE』

    ●佐藤義尚/1999/ビデオ/カラー/7分
    ●イメージフォーラム・フェスティバル2000入選
    ●前進移動は、歩行時に人が無意識に見る眺めだが、横移動は、道具や機械文明の発達なしには見ることのできない歴史上比較的新しい眺めである。篭や馬車に始まり、列車や車でスピード感が加わった。その視覚情報を、さらにコンピューターという新しい文明の中に取り込むと、かように異様な光景となって立ち現れる。
  • 『three minutes out』

    田端志津子/2000/8ミリ/カラー/3分
    ●イメージフォーラム・フェスティバル2001奨励賞
    ●明解なコンセプトと緻密な計算に基づいた3分間の紀行映画。作者が手に持ったスチールとその背景の景色。一つのフレームの中に入れ子構造になった二つのイメージが、ループ状に関連して展開していく。ライブ・アニメーションならではのズレやチラつきも魅力的。スチールの連なりとしての"映画の原点"を現出!
  • 『むすんでひらいて』

    ●田端志津子/2001/8ミリ/カラー/3分
    ●メージフォーラム・フェスティバル2002奨励賞
    ●素材は平面である紙。たとえどんなに折ったり丸めたりしても画面上では平面のフィルムに記録されて、平面のスクリーンに映るものである。だからこそこの映画の"ひらく"シーンにはシンプルだが強烈な印象を与える。だれでもが共感できる手の記憶を正にハンドメイドでアニメートしてみせた「立体」作品の誕生。
  • 『ひととき -2002年5月15日-』

    ●佐竹真紀/2003/ビデオ/カラー/3分
    ●イメージフォーラム・フェスティバル2004奨励賞賞
    ●誰もいない旅館のような座敷が舞台。それが現在の時間としてビデオ映像で映し出されると、そこにフラッシュのように同ポジションの写真が過去の時間として嵌め込まれる。数人の女性が何かのお祝いで集まっていることを物語る写真。空間が持つ"記憶"を鮮やかに浮かび上がらせた、映像と写真アニメーションの融合!
  • 『連続四辺形』

    ●原田一平/1987/8ミリ/カラー/13分
    ●イメージフォーラム・フェスティバル1987入賞
    ●かつて父親が自分を撮った8ミリ・フィルム。そして今作者は自分の子供を8ミリで記録している。時間を隔てたその2本のフィルムを対比させ、ヴィジュアルに構成した。
  • 『SUNDAY』

    ●金東薫/2007/ビデオ/カラー/10分
    ●イメージフォーラム・フェスティバル2008奨励賞
    ●徹底的にコマ撮りで撮影された光とシルエットの採集である。窓辺にかかったズボンや上着、ビルや街灯のシルエット、太陽にかざされた洗濯物、雲はダイナミックに流れ、木立や卒塔婆は小刻みに揺れる。室内外の日常風景のはずが、8ミリフィルムの温かい質感と相まって、どこか太古を彷彿とさせる劇的な神秘性を帯びてくる。
  • 『診察室』

    ●大山慶/2005/ビデオ/カラー/9分
    ●メージフォーラム・フェスティバル2005入選、アルスエレクトロニカ2005佳作
    ●怪我や病気をすると、普段は意識しない肉体の存在感があらわになる。しこり、鈍痛、膿み、発熱、出血など... 特に、子供時代の身体にまつわる記憶は強烈である。作者は、拡大した肌の質感を直接コラージュし、コマの微妙な揺らめきを利用して、「単なる肉の袋としての私」というリアリティに想いをはせる。
  • 『つぶつぶのひび』

    ●大木千恵子/2004/ビデオ/カラー/19分
    ●イメージフォーラム・フェスティバル2005入選
    ●納豆工場でアルバイトをする作者は、日々の生活に意義を見いだせないでいる。ごみ捨て時に空を見上げると、今日も上空を飛行機が飛ぶ。「飛んだら何か変わるかなあ」。セルフ・ドキュメンタリーの形式を採りながら、バイト→風俗で働く友人→飛行場と巧みに話をつなげ、なんと飛行機をチャーターしてしまう展開へ。
  • 『THE 梅屋商店』

    ●渡辺亮/2010/ビデオ/カラー/9分
    ●イメージフォーラム・フェスティバル2011大賞
    ●水産加工工場のドキュメントと思いきや、夜の無人の工場。リズミカルなノイズ音を背景に、開閉する扉、走り回る台車やフォークリフト、動き回る電気の配線コードやゴム手袋の群れ、また壁に拡大投映された魚たちの目など、コマ落しやズームで加速された奇妙でシュールな世界が展開する。作者の幼い頃から残る記憶の世界だ。
スペシャルトーク:「海外から見る日本の映像アート」
  • ●ゲスト:トニー・レインズ(映画作家・映画批評家・映画祭プログラマー/イギリス)
    ●聞き手:山下宏洋(イメージフォーラム・フェスティバル ディレクター)
    ●北野武、三池崇史といった現在では世界的な有名監督をいち早く海外に紹介したことで知られるトニー・レインズは日本を含むアジアのインディペンデント映画に精通する第一人者であり、ロッテルダム、バンクーバー、ロンドンなど数々の国際映画祭のプログラミングを担当してきた。日本の映像アートが過去、現在どのように受け入れられ、そしてこれから映像での表現を志す若い世代は何を目指すべきなのか、国際的な視点から語る。