捕獲された画と声
イメージフォーラム映像研究所を卒業後、多くのアニメーション作品を制作している清水好美の初個展。精緻なドローイング・アニメーションと共に特徴的なのは、夢や断片的なイメージが元になったダイアローグ/モノローグである。唐突に始まる独白、誰に宛てるともない便り、不気味なスローガン。これらは意識下から染み出してきたような声であり「お話」の断片、夢の全体からみたらしっぽのような小さな存在だ。8ミリで撮影された風景や女の肉体、鳥(らしきもの)、繰り返し出現する自画像とおぼしき女の頭部、口、抜け落ちる歯、ゴワゴワとのたうち回る大量の髪の毛のアニメーションに、これら声の断片が重なるとき、異質な要素のぶつかり合いから奇妙なイメージを思わず連想してしまう。鳥の絵が多いのはマックス・エルンストの影響か。シュルレアリストが遊び半分で実験したような、断片の強引なキメラをフレームの外に見てしまう。
それは、そのつながりの唐突さ、不気味さ故に、手渡されたコラージュの続きをついつい引き受けてしまうことだ。清水好美の映画を見ることは、果てしなく続く妄想のコラージュの片棒を担ぐことなのかもしれない。
(澤隆志)
絵コンテと字コンテを鳥籠から放つ
意識しているわけではありませんが、私の作品には「鳥」と「逆さまになった下半身」がよく出てきます。
何を意味しているのか。私自身よくわかりません。
それどころか、映画に出てくるモチーフの全て、物語、ことば…それらの意味を作者が知りません。
私は頭に浮かぶ画、感触、妄想のかけらをノートにかき溜めては
それらをパズルのように組み合わせて作品をつくります。
結果、とてもいびつで不安定なよくわからないものになる。
そこから自分自身を読み解くことすらできません。
一方、テーマが無い、中身が無いと言われるのが怖い。
順序が逆ですが、最後に作品の骨とすべく
物語のようなものを突き刺そうと努力します。
無責任かもしれませんが、私は
作品としてできあがったこのいびつなものを
誰かに読み解いてほしいと願っているのかもしれません。
(清水好美)
<上映作品>
HITORIASOBI/8ミリ/6分/2001マドロ/8ミリ/10分/2001
犬の棺/8ミリ/17分/2002
Era Era/ビデオ/4分/2003
POTOLITAM/ビデオ/3分/2004
シヒナ/ビデオ/3分/2006
TAYUTA /ビデオ/4分/2007-2009
※字コンテリーディング 朗読:清水好美
ピクニック
チョウを食べる
アンナ
ごちそうさま
以上全て清水好美作品
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1977年 茅ヶ崎生まれ。女子美術大学卒(日本画専攻)、イメージフォーラム付属映像研究所 24期本科・専科卒業。
働きながら、8ミリフィルムやビデオによる映像制作をほそぼそ続けています。青空飢饉という自主上映団体で主に活動。 http://www.pictstudio.com/inu/