イントロダクション
映像作家の前田真二郎と芹沢洋一郎による2人展。未発表の新作を含む作品上映とクロストークを2日間にわたって行う。両監督はそれぞれ、1990年代初期のイメージフォーラム・フェスティバル(IFF)において入賞し、その後1995年のIFFでは、前田は『L』、芹沢は『DIRECT LIGHT』を招待作品として出品している。この2作品は、偶然にも共通して「スクリーンの光」が主題だった。2人展の初日のProgram Cでは、これらの作品を上映し、「1995年の実験映画」というテーマでクロストークを行う。なお、1995年は月刊イメージフォーラム誌が1980年の創刊から15年を経て休刊となった年でもある。
2日目のProgram Eでは、芹沢の過去作2作品と、前田、芹沢、各々の新作を上映する。『感情・ゲル状の景色(武吉伸治とのビデオレター)』は、コラボレーターの武吉伸治氏と、独自の映像論を実践とともに言葉にしていく過程を本編とするビデオ作品。『サヴァイヴァル5+3(デジタル捕獲版)』は、映像メディアとして絶滅危機に瀕する「8mmフィルム」と、癌に罹患しサヴァイブする芹沢自身の姿を重ね合わせた、セルフドキュメンタリー形式を借りた実験映画の秀作。いずれも芹沢自身が出演している作品だ。それに続き、前田は『BETWEEN YESTERDAY & TOMORROW』を発表する。本作は、前田が2008年から続けている「指示書に基づいて制作する5分間の短編映画」のシリーズ最新作。さらに芹沢も、今回の上映会に向けて制作した『BETWEEN YESTERDAY & TOMORROW』を新作として発表する。上映後のクロストークのテーマは「撮影する映像作家」が設定されている。
初日のProgram Aの『日々“hibi”AUG』は、山形国際ドキュメンタリー映画祭2023 インターナショナル・コンペティション部門に選出された長編映画。東京では2024年にわずか数箇所でしか上映されていないので貴重な機会となる。Program Bの『合成人間のリハビリ』は、1993年に芹沢が16mmフィルムで制作した『合成人間』をそのまま取り込んだ大胆な構成の作品で、IFF2022や、韓国のEXiS2024で選出・上映された近年の重要作だ。
2日目のProgram Dでは、『BETWEEN YESTERDAY & TOMORROW 2011/2021』を上映する。これは、前田の呼びかけに応じて制作された5分間の短編映画を集めたオムニバス作品で、大木裕之、池田泰教、鈴木光、崟利子、前田真二郎の5名が監督として参加している。作品のセレクトや構成は鈴木光監督が担当。上映後には監督たちによる舞台挨拶も予定されている。
※『BETWEEN YESTERDAY & TOMORROW』の指示書
Program A
日々”hibi”AUG
前田真二郎/デジタル/120分/2022
Program B
合成人間のリハビリ
芹沢洋一郎/デジタル/49分/2022
Program C
L
前田真二郎/ビデオ/25分/1995
DIRECT LIGHT
芹沢洋一郎/16ミリ/16分/1995
※※上映後、両監督によるクロストーク「1995年の実験映画」
Program D
BETWEEN YESTERDAY & TOMORROW 2011/2021
鈴木光、大木裕之、崟利子、池田泰教 前田真二郎/デジタル/54分/2024
※監督による舞台挨拶あり。
Program E
感情・ゲル状の景色(武吉伸治とのビデオレター)
芹沢洋一郎/ビデオ/25分/1993
サヴァイヴァル5+3(デジタル捕獲版)
芹沢洋一郎/デジタル/9分/2017
BETWEEN YESTERDAY & TOMORROW ※新作
前田真二郎/デジタル/5分/2025
BETWEEN YESTERDAY & TOMORROW ※新作
芹沢洋一郎/デジタル/5分/2025
※※上映後、両監督によるクロストーク「撮影する映像作家」
Profile
前田真二郎
映像作家。1969年生まれ。大学在籍時にIFF92、IFF93で連続入賞。90年代より映像作家として活動し、他領域アーティストとのコラボレーションも積極的に取り組む。WEBムービープロジェクト『BETWEEN YESTERDAY & TOMORROW』が、第16回文化庁メディア芸術祭アート部門 優秀賞を受賞。近年の発表に、第23回中之島映像劇場「光の布置−前田真二郎レトロスペクティブ−」(国立国際美術館/2022年)、山形国際ドキュメンタリー映画祭2023 インターナショナル・コンペティション部門 等がある。情報科学芸術大学院大学[IAMAS]教授。
芹沢洋一郎
映像作家。1963年生まれ。17歳で初作『まじかよ?』(1980)がPFF81入選。流血映画を連作後、奥山順市とロベール・ブレッソンから「主題と手法の一致」を学び作風を転向。『間男』(1989)がIFF90、『殺人キャメラ』(1996)がサンフランシスコ国際映画祭で入賞。その後、沈黙期間を経て、『サヴァイヴァル5+3』(2016)を20年ぶりに発表しIFF17において観客賞を受賞。IFF17では特集プログラム「芹沢洋一郎作品集」が組まれる。IFF2022では、過去作『合成人間』(1993)が丸ごと取り込まれた作品『合成人間のリハビリ』を発表している。