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講師紹介

 
水江未来
アニメーション作家
profile
細胞や微生物、幾何学図形を用いた音楽的なアプローチの抽象アニメーションを数多く制作。2011年、短編作品『MODERN No.2』が、ベネチア国際映画祭(イタリア)でワールドプレミア上映され、翌年のアヌシー国際アニメーション映画祭(フランス)で、音楽賞を受賞。2014年、短編作品『WONDER』が、ベルリン国際映画祭(ドイツ)でワールドプレミア上映され、同年のアヌシー国際アニメーション映画祭で、CANAL+CREATIVE AID賞を受賞。2014年には、これまで制作した短編作品を再編集して1本にまとめたオムニバス長編映画『ワンダー・フル!!』が、全国15館で劇場公開された。現在、長編アニメーション『水江西遊記(仮)』を製作中。
message
冒険の旅に出よう
自分の作家人生を振り返るときに、「映画祭」を抜きにして語ることは出来ない。私の作家人生は映画祭と共にあった。映画祭がなければ、作家を続けていなかったかもしれない。 2007年の春、フランスのアヌシー国際アニメーション映画祭で修了制作が上映されることになり、初めて海外映画祭の現地に行くことにした。最初は「最初で最後かもしれないから記念に行ってみよう」くらいの気持ちだった。映画祭からの、読めない英語のメールを自力で翻訳しながら、ホテルの予約をし、現地までの航空券を買い、一人で映画祭に乗り込んだ。 巨大な会場、満員で盛り上がる観客の中で、短編アニメーションの新作を毎日浴びるように観た。その中で自分の作品が上映されることの意味は大きかった。他の作品と比べて、自分の作品は何が足りなくて、何が持ち味になっているのか。まさに勉強の場だった。しかし、最も印象的だったのは、映画祭のスタッフが「日本の短編アニメーションは、山村浩二しかいない。次に続くスターが誕生していない。」と言っていたことだった。悔しかった。この言葉に自分の中で火がついた。授賞式でも、自分の作品は箸にも棒にもかからないと、自分で分かっていながらも、プレゼンターが受賞作品を読み上げている間は、「もしかしたら?」と、ドキドキするのを止めることが出来なかった。帰りの飛行機の中で思ったことは「このままでは終われない。新しい作品を作って、必ずここに戻ってくる」という決意だった。  私にとって、映画祭とは「冒険の扉」で、作品は「その扉を開く鍵」なのだ。この映像研究所では、それぞれの冒険の鍵を作ることを目指したい。さあ、その鍵を持って、冒険に出よう。

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