『もし、あなたなら』 IF YOU WERE ME
監督:イム・スルレ(『ワイキキ・ブラザーズ』)チョン・ジェウン(『子猫をお願い』)ヨ・ギュンドン(『寵愛』)パク・チャヌク(『JSA』『復讐者に憐れみを』)パク・ジンピョ(『死んでもいい』)パク・クァンス(『チルスとマンス』)※( )内は代表作。
2003/35mm/110mins
国家人権委員会のために、6人の韓国の著名映画監督(内二人は女性)が作った短編映画のオムニバス。身体ファシズム、障害者の待遇問題、搾取される外国人労働者など、非常に多岐にわたった問題に挑戦している。現代の日本映画とは異なり、韓国人映画作家たちは社会的、あるいは政治的なラディカリズムに興味を示しており、その姿勢を当然としている。この6話はそれぞれ考えさせられるし、挑発的な内容を持っている。太った女性に対する偏見を扱ったイム・スルレと、英語の発音を良くするために強制的に舌の手術を受けさせられる中流家庭の子供を描いたパク・ジンピョの2作品が特に際立っている。
『反・弁証法』 ANTI-DIALECTIC
監督:キム・ゴク/キム・ソン dir:KIM Gok,KIM Sun
2001/video/55mins
『時間意識』 TIME CONSCIOUSNESS
監督:キム・ゴク/キム・ソン dir:KIM Gok,KIM Sun
2002/video/45mins
双子の兄弟キム・ゴクとキム・ソンは、現在の東アジアで制作活動をしている「実験」映像作家の中で、おそらく最も興味深く果敢な存在と言えるだろう。ダークなウィットに富んだ撮影で、彼らのフィルム/ビデオは政治的、心理的、社会的、性的な問題をコンセプチュアルな禅問答の如く提示する。『反-弁証法』は、マグリットの絵画に啓示を受けたようだ。韓国で一番怠惰な画家が、破滅的な愛情生活のなかで、どうすればうまくリンゴを描けるかについて悩むさまが描かれている。『時間意識』はアルコール依存症の詩人と彼の面倒を見る娼婦の関係性を追う謎めいた話。そこに殺人のミステリーが見え隠れする。
『マイ・コリアン・シネマ』 MY KOREAN CINEMA
監督:キム・ホンジュン dir:KIM Hong-joon
2002・2004/video/80mins(apprx.)※新章が間に合わない場合は60分。 巨匠イム・グォンテク(『キルソドム』『春香伝』)の助監督でありながら、2本の長編作品(『薔薇色の人生』『ジャングル・ストーリー』)を監督したキム・ホンジュンは、現在プチョン国際ファンタスティック映画祭の実行委員長であり、韓国芸術総合学校で教えている。第一線で活躍する映画批評家でもある彼は、この一連のパーソナルな短編作品で、韓国映画に対する自分の気持ちを再検証していく。過去から現在にかけて、自分自身の映画業界での経験と、長い間失われていた60年代から70年代にかけての韓国ジャンル映画の彼自身による再発見を踏まえながら映画は語られる。韓国映画をより深く知ることができると同時に胸にせまる感動があり、韓国映画の将来を予見しているともいえる作品。
『ビーイング・ノーマル』 BEING NORMAL
監督:チェ・ヒョンジョン dir:CHOI Hyun-jung
2003/video/58mins
『シュガー・ヒル』 SUGAR HILL
監督:イ=ソン・ヒイル dir:LEE-SONG Hee-ll
2000/16mm/23mins
チェ・ヒョンジョンは、友達のJ(パク・ジュヨン)との途切れがちな関係を撮影し、この非凡な作品を作りあげた。Jは両性具有者で、やがて「完全な」男性になるために手術を受けることを決意する。彼らは最初、大学のルームメイトとして2000年に出会い、別々な道に進んだが、Jが「ノーマル」になるという、空しくも見える旅の記録を完成させるために再び出会う。同時上映の『シュガー・ヒル』は、韓国のゲイ解放運動の先駆けとなった作品。妻に自分の本当の欲望を告白していないゲイ男性の、破綻した結婚生活という実際の出来事に基づいた話を描く。
ロング・カッツ(105分)
『もうもどれない』 IRREVERSIBLE
監督:パク・キョンモク dir:PARK Kyung-Mok
2002/35mm/43mins
『こもれ日のなかの休息』 REST IN THE LIGHT
監督:キム・ディム dir:KIM Dim
2002/16mm/30mins
『ワンダフル・デイ』 WONDERFUL DAY
監督:キム・ヒョンピル dir:KIM Hyeon-Pil
2003/16mm/32mins
韓国では、長めの短編劇映画が映画業界への入り口と今でもみなされているので、毎年多くの作品が制作されている。このプログラムではここ数年で最も野心的な作品を3本紹介しよう。キム・ヒョンピルの『ワンダフル・デイ』(カンヌ国際映画祭シネフォンデーション部門出品)は、盲目の少年と自動車整備工の田舎町でのスキャンダラスな交流を描いた作品。パク・キュンモクの『もうもどれない』は、ビデオ作家ジョンナムと教師ヘソクの壊れかけた関係を描き、自主制作ながらホン・サンスと村上春樹の世界へと高めている。キム・ディムの『こもれ日のなかの休息』はセリフが一切なく、4人の登場人物のポートレートを紡いで、ストーリー的なものを構築する。