The Films of Taku Furukawa

上京物語
TYO-STORY

監督・脚本・作画:古川タク
音楽・演奏:本多俊之 音響監督:山崎宏
アニメーター:湯川高光+ユカワ・モリ
1999年作品/カラー/35ミリ/13分

【ストーリー】
タイトルが現れる。マイクロぜんまい玩具のスーツケースがトコトコ歩いている。一瞬“TOY-STORY”か? そんなわけがない。くるくるっと回ってアナグラムの“TYO-STORY”、『上京物語』だ。

1998年頃、瀬戸内海のある島からフェリーに乗って東京に向かうおじいちゃんとおばあちゃんがいる。デッキに集まってくるうみねこにクッキーのくずを与えている。岡山駅からは新幹線、「のぞみ500系」に乗り込む。切符をどこに仕舞ったのか、おじいちゃんがポケットの中をごそごそ。「あらま、おじいさん。切符、帽子にはさんだままやないの。」とおばあさん。

車内ではもっぱら子供たちが小さかった頃の思い出話に花が咲く。娘の結婚式の写真を見ながら「好江はピアニカとバレエ専門やった。いつのまにやら大きゅなって、、。」「あれも今や二児の母か。ヒロシさんも医者の仕事が忙しゅうてのう。」「なんや今はテニスばっかりやて。」
「誠なんてプラレールとゲームのポンやんか。」「大学入った思たら、すぐサークルの子と結婚やで、ほんまにびっくりしたわ。」「晴美さんちょっと太ったんちゃう?」「ふたりとも趣味が音楽で、よかったのう。夫婦円満の秘訣じゃ。」「あんなん、カラオケばっかりやんか。」

やがて新幹線のぞみは富士山を横目に大井川を渡り、、。

「東京、東京」
「いつ来ても人だらけ、みんなよう疲れへんわ。」「こんな長い、動く歩道は人様を馬鹿にしとる。」

やがて多摩西部の娘の家に着く。娘の夫、ヒロシさん隣で医院を開業してる。超多忙。
「ママゆっくりしてって、とはいうもののえらいせわしない夫婦や。ケイタイ鳴りっぱなしやんか。」「テニスのどこがおもろいんや。あほか。婆さんや、2階に上がって孫の顔でも見てこよう。」

「ハーイ、ジッチャン、チョーカワイイ、ユー子スキ」
「わたしテキには、グランパ、けろんぱ、グラッパ みたいな」

「婆さんや、近所でも散歩してみんか。」「こんなちっちゃな公園でかわいそやな。子供らは。」「そやけど、ここらのカラスは頭ええで。えもんかけ、いっぱい集めて」「ハンガーと言え。ハンガーと。」

「ここが、あたらしい誠の家か。」「えらい高いマンションや、前の団地よかったのになあ。駅近うて。」「そうはいかん。誠にも見栄ちゅうものがある。」「なんかテレビに出てくるような流行りの場所やな。」


はるばる、娘家族、息子家族を訪ねてきた、老父母の東京滞在記はまだまだ続きますが、後はアニメーションでお楽しみください。

もちろん、「上京物語」にはいっさい台詞はなく、音楽と最小限の字幕で進行します。


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