国内外の映像アート作品の上映、レクチャーを定期開催。古典的名作 から、最新の実験映画まで

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弱冷房車と抗菌マグロ
このプログラムは歌人の穂村弘による公開レクチャーである。23歳のときに林あまりの短歌に出会った事で一首の歌の持つ力を知り、以来気鋭の歌人として歌集はもちろん、詩集、エッセイ等も精力的に執筆している。映像を喚起させる歌の多いためか、画家やイラストレーターとのコラボレーションも多い。
今回のレクチャーでは、短歌と映像を出会わせてみたいと思う。穂村弘による短歌作品の紹介と解説と共に、呼応するようにセレクトされた実験映像作品の上映を行う。導入は、寺山修司から。俳句、短歌、散文詩、芝居、映画、評論と表現の(問いの?)フィールドを拡大していった彼の作品から始まって、90年代の短歌と実験映画のつかむイメージを追いながら個々の作品が持つ時代の空気を感じることが出来ればと思う。言葉と映像の表現で何が共通していて何が違うのか。寺山修司の時代と弱冷・抗菌の時代で何が変わっていったのだろう。(澤隆志)

若い頃の寺山修司のエピソードをきいたことがある。
三島由紀夫脚本の芝居を観に行った寺山が、休憩時間になったとたんにすっくと立ち上がって「もう三島も終わりだな、これからは寺山の時代だ」と叫んだということだった。いったいどういう性格なんだ、と思って驚く。休憩時間ってことは、まだ後半があるだろう。せめて最後まで観てから云えよ、と思うのだが、改めて考えてみると、それは単に性格の問題というだけではなく、その背後には、今の人間にはよくわからない時代の空気感のようなものがあったのではないか。
『家出のすすめ』を書いて、実際に家を出てきてしまった若者たちを次々に自分の劇団に受け容れる、などということが当時はできたのだ。今だったら犯罪扱いされてしまうだろう。
また寺山は一般市民を巻き込んだ市街劇、ハプニング劇を盛んに行っていたが、現在では、演出上、まっくらな闇が欲しいと思って会場の非常灯を消そうとするだけで一苦労になるらしい。
そのかわり(?)我々には弱冷房車や抗菌便器が与えられている。弱冷房車や抗菌便器の意味を理解できるのは、ごく限られた時代と空間を生きている人間だけだろう。
そして、二一世紀には板前さんが素手でお寿司を握ることが禁止されるのではないだろうか。抗菌手袋をして握ることが義務づけられるのだ。いや、それでも完全とは云えない。いちばんいいのは、抗菌エサだけで大きくした抗菌マグロを開発することだ。マグロ自体が抗菌ならもう大丈夫。私たちは安心してトロが食べられるのである。(穂村弘)

穂村弘●1962年札幌生まれ。歌人。歌集に『シンジケート』(沖積舎、90)『ドライ ドライ アイス』(沖積舎、92)『手紙魔まみ 夏の引越し(うさぎ連れ)』(小学館、01)等。短歌(反)入門書『短歌という爆弾』(小学館、00)やエッセイ『世界音痴』(小学館、02)、詩集『求愛瞳孔反射』(新潮社、02)がある。 また、 短編集『いじわるな天使から聞いた不思議な話』(大和書房、94)や訳書に『ちずのえほん』(フレーベル館、96)など。
桃色ベビーオイル
受付
当料金1500円(当日お支払い下さい)
定員50名
下記のTEL、もしくはE-mailでご予約下さい定員になり次第、締切となります。
TEL:03-5766-0116(イメージフォーラム)
E-mail:sawa@imageforum.co.jp

■上映作品
檻囚 寺山修司/16ミリ/11分/1969(撮影1962)
行き来れども待ちあかず
齋藤ユキヱ/24分/16ミリ/1994
桃色ベビーオイル 和田淳子/16分/8ミリ/1995
人のかたち 能瀬大助/8ミリ/20分/1997
景色の映画 林勇気/ビデオ/15分/2001

 

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