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“TRICKY WOMEN”は2年に1回ウィーンで行われる女性作家によるアニメーション映画祭である。2003年の3月6日から13日まで開催された”TRICKY WOMEN 2003”には世界20カ国203作品がエントリーされた。コンペティションや自国オーストリアの若手作家特集の他に、チェコ、韓国、日本の特集プログラムが組まれ、シンポジウムやワークショップも行われた。
今回日本での上映は、コンペ入賞作品と、若手作家の作品で構成された”European Tricky Women”と、イメージフォーラムがキュレーションした日本プログラムを再現する”Japanese Tricky Women”の2プログラムで構成されている。
Tricky Women info: www.culture2culture.at

作品コメント
リモート・コントロール●映像をコントロールすることと、我々自身が行う目と耳に入ってくるランダムな情報を整理する操作が対比される。
ドレゼンス●服のとりかえっこによってアイデンティティの多様性と相互の影響が見えてくる
ブリンク●アコースティックな伴奏付きで真っ黒なフレームが上映される。その視覚のミニチュア版がサイレントで続く。聞いた音から”予想された”イメージの知覚の実験。
異物●音と合わせて異物が動く。ダンスのように。闘いのように。
mir mig men●輪郭のぼやけた黒の戦闘機と、キラリと光る軍服が寒空にきらめく。
リピート●私たちは日々の生活を機械的に決定づけられている。毎日うんざりしている。何か新奇なことはないかと。変化が訪れると、私たちは新しいルーチンに陥る。
ヒッグス粒子●ヒッグス-ボソン粒子と遊星X間の航海中は、すべての船員を渡し守にゆだねたかのようだった。ここはおそらく銀河系の縁で・・・
エスケープ●日常から脱却するために絵を描く。孤独から自由になるために孤高を目指す。矛盾するように聞こえるかもしれないが、これは有効なのだ。あなたの想像力はあなたの世界に勝る。
虚飾●彼女はもはや若かりしころを憶えていない。
ソロ・ミュータント●サイ-ファイなカフェの宇宙。砂糖でできた宇宙船や宇宙飛行士と、マッチの惑星との遭遇。ミュータントのためのソロ。
泣いたり慰めたり●恥じらいと喪失についての家庭のおはなし。部屋で一人、女は最近のことを考える・・・ おわりなき関係。彼女の目を通して、彼女の物語を知る。
恍惚の人たち●死と腐敗の不可避性を見据える視線。我々の社会にある”死”を否定したがる共通認識からヒントを得た作品。テクストはフィリップ・ラーキン詩集「高窓」より。
築地物語●ナオコは眠るためならなんでもした。彼女は世界最大の魚市場のある築地の近くに住んでいる。
生体模倣●突如発生した粘土と半導体のミュータント。プリント基板やLSIを飲み込んで肥大化し、急速に人間の赤ん坊まで進化して歩行を始める。AC電源なのが可愛い。
魚2●とある実験室に陳列された未分化な生命体。岩明均のマンガ「寄生獣」を彷彿させる水棲動物のキメラ達は瓶をすり抜け、床を伝って異種交配を繰り返す。
月をみせる●ステキな「みんなのうた」
Who doesn’t know (what) my name●主人公は虫(である私)。存在自体嫌われ者である虫は、愛されようとすればする程嫌われてしまう。失望のあまり死んでしまった虫は蝶として生まれ変わり、次には花となる。(清水真里)
certain night, cartain place (the record of a man)●主人公は鉄製の人間である。鉄が錆びていく様子を映像にし、主人公の置かれた非常な状況と刻々と過ぎてゆく時間を表現した。(大橋英子)
three minutes out●この作品には3つの時間の流れがあります。紙の中の時間、撮影中の時間、あと、作品が上映されるときの時間。これらを、フレームの中と外で目に見える形で表わしたかったのです。(田端志津子)
むすんでひらいて●平面である紙を被写体にして、平面のスクリーンに投影する「立体」映画作品。誰でもが共感できる手の記憶を正にハンドメイドでアニメートさせた。
RAM●コンピュータで合成された画像をプリントアウトして8ミリフィルムで再撮影したハイブリットな構成。80年代のサイバーパンクなイメージとフィルムの物質性の追及。
すべては沈黙の色●クエイ兄弟を彷彿させるミニチュアセットと実景が交錯するモデル・アニメーション。浮遊したベッド、間欠的に落下する砂粒、浸潤する影などミニマルな要素で構成されている。
蛾のいるところ●束芋『にっぽんの台所』とビンチェンゾ・ナタリ『CUBE』が日本の団地で出会ったかのような印象の作品。論理的な理解は全く不可能だがイメージに不思議な納得がいく。
犬の棺●原っぱの真ん中に一冊の本。題名は”食卓の詩”「彼女は1歩目と2歩目の間に食欲を覚え、3歩目と4歩目の間に性欲を覚えた。」
ヒッグス粒子
築地物語
蛾のいるところ
受付(各回入替制)
当日900円/会員600円/2回券1500円

■Aプログラム<European Tricky Women>
リモート・コントロール
スーウィー・イルクック/ビデオ/6分/2001/オーストリア
ドレゼンス
ウリ・コーシャー, マリカ・ラーツォージィ/ビデオ/6分/2002/オーストリア, クロアチア
ブリンク
ビリー・ロイス/ビデオ/7分/2002/オーストリア
異物 イザベル・ベレビンド/ビデオ/3分/2002/ドイツ
mir mig men
カーレー・ゴルト/ビデオ/5分/2002/ドイツ, オーストリア
リピート
ミハエラ・パヴラートヴァ/35ミリ/9分/1995/チェコ
<特別賞>
ヒッグス粒子
メニカ・シュテルマッハ/35ミリ/9分/2001/ドイツ
エスケープ
キルステン・ヴィンター/35ミリ/8分/2001/ドイツ
<レジデンス賞>
虚飾 プラハ・マルケタ/35ミリ/2分/2001/チェコ
ソロ・ミュータント
プラハ・マルケタ/35ミリ/6分/2002/チェコ
<シンクロ賞>
泣いたりなぐさめたり
アリス・ホーキンス/ビデオ/6分/2002/イギリス
<ウィーン市賞>
恍惚の人たち
ルース・リングフォード/ビデオ/6分/2002/イギリス
築地物語
ガエイユ・ドゥニ/ビデオ/6分/2002/イギリス, フランス
※作品提供 culture2culture(ウィーン)

Bプログラム<Japanese Tricky Women>
生体模倣 下西紀/ビデオ/4分/1991
魚2 下西紀/ビデオ/4分/1992
月をみせる 井出千愛/ビデオ/9分/2000
Who doesn’t know (what) my name
清水真里/ビデオ/4分/2000
certain night, cartain place (the record of a man)
大橋英子 (oasis batta)/ビデオ/11分/2000
three minutes out 田端志津子/8ミリ/3分/2000
むすんでひらいて 田端志津子/8ミリ/3分/2001
RAM 神崎愛子/8ミリ/5分/2001
すべては沈黙の色 小瀬村真美 /ビデオ/13分/2001
蛾のいるところ 清家美佳 /ビデオ/6分/2001
犬の棺 清水好美/8ミリ/16分/2002