後期印象派に感動して絵を始めた時から、一番の感動は色と形と絵の具物質を、分解して絵画に構築しなおすというフォーマリズムという形式だった。といってもステラやマチスに感動した訳ではなく、予備校の同級生の描いた紙袋に包まれた瓶の絵に感動した。見慣れた風景でもそれを通して構築しなおすとまったく違った魅力に見えたものだった。
大学の頃からか、袋小路を感じた。形式を通して構築しなおすと抜け落ちてゆく、アクの様な物が凄く必要な物のような気がしたからだ。多分それは、今の時代を生きているという文化や情報の波だったような気がする。その後、自分的な美術禁止事項を制作する。ジャンクな具象絵画、日本趣味を実行し、小平のスーパーやガソリンスタンドのいけてない景色の写真をとり、油絵の具で描いた。
同級生から油絵よりもCGコラージュのほうがいいと言われ、なぜか引っかかる言葉で次第に絵の具という素材から離れた。院に移り絵画に結論を出そうと作った作品では既に、自分という形式的な絵描きを切り離して見ていた。ただそのビデオ画面から流れるRGB信号が心地よかった。多分この軽さをずっと求めていたのだと思う。
社会に出てから、軽くなった絵画は需要がなかった。そこで僕の絵画が、何の需要から変わり、誰の為に形式を追求するかを考えた。
現実をシュミレーションするCGと流通する映像は、描く修練と絵の希少価値を否定する物で、有象無象にわらわらと沸いては消えるものだとおもう。ただ、そういった物で初めて絵を描けるような、そんな気がしている。(高橋慶)
プロプラム
夏/ビデオ/7分/2003
Jidouteki/ビデオ/7分/2003
毎日meet/ビデオ/25分/2004
耳歌/ビデオ/4分/2004
こどものたび/ビデオ/6分/2005
A MAZE/ビデオ/18分/2007
高橋慶|TAKAHASHI Kei
2002 武蔵野美術大学油絵学科卒業
2004 同大学院映像学科卒業
国内外の映画祭、TV、アートスペース、美術館、web等、特にメディアを問えずに発表。
現在ネットワークゲーム開発に従事
上映歴
2003『Jidoteki』
“ヤングパースペクティブ 2003”イメージフォーラム・シネマテーク(東京,日本)
2004『耳歌』
“水の都広島映画祭 2004” (広島,日本)
"ヤングパースペクティブ 2004”イメージフォーラム・シネマテーク(東京, 日本)
"DV アワード" 2004 (ユタ, アメリカ) 入選
2005『毎日meet』
イメージフォーラム・フェスティバル (神奈川, 日本)
"絵画/映画" 横浜美術館(神奈川, 日本)
"ASK映像コンペティション" 久里洋二賞受賞 ギャラリーAsk?
"FANTOCHE05" 入選 (バーデン, スイス)
"中国国際デジタルアニメーションフェスティバル" 入選(北京, 中国)
"ライプチヒ国際ドキュメンタリー&アニメーションフェスティバル" 入選
(ライプチヒ, ドイツ)
2006『こどものたび』
イメージフォーラム・フェスティバル (神奈川, 日本)
“広島国際アニメーションフェスティバル 2006”(広島 日本)
“ボコタ国際映画祭” 入選 (コロンビア ボコタ)
“NHK デジタルスタジアム ベストセレクション” キュレーター 田中秀幸
2007『A MAZE』
“NHK デジタルスタジアム ベストセレクション” キュレーター 田中秀幸“スイス国際アニメーションフェスティバルFANTOCHE07” 入選(バーデン, スイス)