A:おんなのさくひん(10作品/80分20秒)
初期作品群のひとつの特徴は心象映像にある。両親への追憶をつづったものなどを加え、私的で叙情的、感性あふれるプログラムとした。とはいえ、冒頭で上映するビデオ作品のように、早い時期に女性の視点が確立されているのを見逃してはならない。
B:主婦と主婦(4作品/72分40秒)
「主婦という、女性の中でもいちばん無視されている存在が私のテーマです」と出光。主婦である自らの周りの、日々の世界に発想を求めた作品を集めている。自分と、自分でも気がつかない心理的な影との葛藤が、映像の中のモニターを通して描かれる。
C:家族の葛藤(4作品/88分20秒)
作家が女性や主婦の問題の追究を進めていった時、日本の家族のあり方がテーマとなった。テレビドラマとはかなり違った表現方法で、特に母親と息子や娘の関係が、戯画化された形で取り上げられている。
D:芸術家の肖像(6作品/79分)
出光は「創造する、自己表現することによってだけ、私が得られる重要なことがある。それは私の魂の救済だ。芸術には魂を救う力がある。だから私は続ける」と覚悟を語っている。自身の経験をいかして、差別を受け抑圧される女性の芸術家の生きざまを問い直していく。
E:私がつくる。私をつくる。(ダイジェスト集:4作品/90分)
最初の16mm作品から、最新の『加恵、女の子でしょ!』まで、折々の代表作をひとつにまとめた。女性の自立を訴え、また自らも自立しようとしてきた映像作家、出光真子の30年余りにわたる歩みを一望できるダイジェスト版。
構成/ 森下明彦 (メディア・アーチスト)
協力/ 出光真子作品展プロジェクト実行委員会
出光真子●1940年、東京生まれ。早稲田大学に進み国史を専攻する。60年にアメリカに渡り画家サム・フランシスと結婚。以後日本とアメリカを往復する生活が続く。70年にカリフォルニア大学ロサンゼルス校 (UCLA) で実験映画の授業を聞き、これを契機に8ミリ作品を撮る。翌年から本格的な映画作家活動開始、「場所」をテーマにした作品を撮り続ける。75年頃から東京に定着し、ビデオ作品を中心に『グレート・マザー』シリーズ等の日本の家庭を舞台にした作品を多数発表し、ニューヨーク近代美術館、ポンピドー・センターなど多くの美術館に収蔵されている。わが国では最もキャリアの長い女性映像作家。「彼女は、リアリズム美学の背後にある男性主体のイデオロギー的偏向の仮面をも暴き出そうとするのである。」 (スコット・ナイグレン)