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No.1074 林勇気映像個展
「景色と映画の向こう側」
2024 10/25 Fri.,10/26 Sat.

      タイムテーブル

    日付 10/25 10/26
    19:00 -
    14:00 -

      会場 Venue

    • イメージフォーラム3F「寺山修司」
      東京都渋谷区渋谷2-10-2
      TEL. 03-5766-0116

      Image Forum 3F "Terayama Shuji"
      2-10-2, Shibuya, Shibuya-ku
      TEL. 03-5766-0116

      当日受付 Door

    • 一般1回券700円/会員1回券500円(15分前より開場)

  • 細胞とガラス

    細胞とガラス

  • Fragments of Journey

    Fragments of Journey

  • Our Shadows

    Our Shadows

  • the outline of everything

    the outline of everything

  • LAST BOY LAST GIRL

    LAST BOY LAST GIRL

  • 15グラムの記憶

    15グラムの記憶



イントロダクション

林勇気作品の風景
大切にしている記憶の中の風景というのは誰でもいくつか持っているのではないかと思う。それらは客観的な風景というよりは自分の主観によって変形された、感情を揺り動かすものであり、そうした記憶は失くしていた自分の持ち物のように、なにかの折に不意に蘇ってくる。近年の林勇気作品を見ていると、そんな自分が見た景色の記憶というものが何かあやふやなものに感じられてくる。
林勇気は膨大に撮影された写真や映像を素材にしてコラージュやアニメーションの技法を駆使し、多数の作品を制作してきた。イメージフォーラム・フェスティバル2002で審査員特別賞を受賞した初期の作品『景色の映画』は写真を使ってどこでもない架空の風景を作り出していたが、近年の作品では、“誰かの視点”がより強調されているようだ。今回の上映作品『細胞とガラス』(2020)は主人公のガラス工芸家の見た風景が窓枠の向こうに見えるようであるし、『15グラムの記憶』(2021)は主人公の祖父が撮った写真を中心に展開していく。こうした一連の作品は同時に視点の持ち主の記憶をバーチャルにたどる構造を持っている。観客はその過程で作品中の人物と一体化し、『Fragments of Journey』に出てくる風景のパズルのように体験を構築していくが、そこに映像というメディアの特性とリアリティのあり方がよく現れている。
また、大量の写真を星のように見せる表現など、カタルシスのある映像の効果も忘れられていない。大量の写真=記憶を目撃する時、観客は世界と一体化するような感覚に陥るのではないだろうか。淡々とした語り口と精密な構造からくる静かなイメージの中に不意に大胆なイメージが挿入される。そこに林作品の「映画」としての魅力を多いに感じている。(イメージフォーラム 門脇健路)

上映作品(6作品/69分)

細胞とガラス  
林勇気 × 京都大学iPS細胞研究所(CiRA)/ デジタル/ 10分/ 2020
京都大学iPS細胞研究所(CiRA)の研究員とディスカッションしてシナリオを執筆し、科学的根拠をもとに未来を描きました。動物の体内で生成された臓器の移植を受けたガラス職人が友人のAから「古くなった家の窓ガラスをガラスの器に作り直してほしい」という依頼を受けます。窓枠は私自身が撮影し、窓ガラスの写り込みはインターネットで収集した映像を合成して制作しました。異なる撮影者の撮影した映像を組み合わせることで、命や細胞、意識や時間の流動性や曖昧さを表現し問題提起をします。様々なメタファーが重なりストーリーが紡がれていく作品です。主な上映にオーバーハウゼン国際短編映画祭など。

Fragments of Journey  
林勇気/ デジタル / 4分/ 2013
moskitooのアルバム「mitosis」の収録曲「Fragments of Journey」のミュージックビデオ。私が旅行した時に撮影した写真を切り抜き重ね合わせて制作しました。写真のデータの断片でできた世界の中を旅し、パズルをくみあわせることで世界と記憶がつながります。主な上映にNIPPON CONNECTION など。

Our Shadows  
林勇気/ デジタル / 15分/ 2022-2024
「私」であるAが経験した出来事を演者が演じなおし、それを撮影して制作しました。パンデミックが収束に向かう夏の日に、双子のBと2年ぶりに再会した1日を描いています。AとBは会えない期間にyoutube上で日常の様子を撮影した映像を往復書簡として交換していました。AはBが生活しているかつて造船所があった街を訪ねます。街を歩き、広大な元造船所にたどり着きます。そこでAは浮遊し溶け合う様々な記憶のイメージに出会います。そして、Bの作業場で初めて2人一緒に撮影した映像を見ます。2022年のクリエイティブセンター大阪での個展「君はいつだって世界の入り口を探していた」に出品された同作に映像を追加、編集し2024年に完成しました。完成版もナレーション違いの2種類あります。

the outline of everything  
林勇気/ デジタル / 7分/ 2010
私は作品の制作の過程においてコンピューター上で膨大な量の写真を切り抜きます。その時にマウスなどのデバイスを通じて写真の中の像そのものに触れている感覚があります。コンピューター上でマウスの軌跡をドローイングして、アニメーションにする事で感覚を可視化します。現実から画面の向こう側にある世界や像に触れた時の触覚をテーマにした作品です。主な展覧会と上映にHuman Frames (KIT - Kunst im Tunnel / デュッセルドルフ、ドイツ)、アンカラ映画祭など。

LAST BOY LAST GIRL  
林勇気/ デジタル / 14分/ 2006
撮影しながら旅する2人の物語。写真を切り抜き、重ね合わせ制作した、記憶と記録に彩られた、「終わりの世界」での出来事を描いています。音楽はsoraが担当しています。インスタレーションバージョンもあり、シングルチャンネルバージョンでの上映になります。主な上映と受賞にトロント・リールアジアン国際映画祭のWallace Most Innovative Film or Video Production Award、兵庫県立美術館での個展の屋外上映会など。

15グラムの記憶  
林勇気/ デジタル / 19分/ 2021
祖父の遺品の中にフロッピーディスクとカメラがありました。撮影した写真をフロッピーディスクに記録する、2002年発売のソニー製の「Digital Mavica」というカメラでした。フロッピーディスクの中には祖父が撮影した近隣の川の写真が入っていました。私はそれらの川をたどろうと思いました。2021年eNatrs(京都)での個展でインスタレーションとして発表したシングルチャンネルバージョンになります。主な上映にカッセル・ドキュメンタリー・フィルム&ビデオ・フェスティバルなど。

※上映終了後に下記のゲストとのトークイベントを予定しています。
10月25日(金) 五島一浩(映像作家)
10月26日(土) 萩原朔美(エッセイスト、映像作家、演出家、多摩美術大学名誉教授)


プロフィール 林勇気

  • 林勇気

  • 映像作家。膨大な量の写真をコンピューターに取り込み、切り抜き重ね合わせることでアニメーションを制作。自ら撮影した写真のほか、人々から提供された写真やインタビューを素材とした制作により、デジタル・メディアやインターネットを介して行われる現代的なコミュニケーションや記憶のあり方を問い直す。 近年は他領域とのコラボレーションや、ワークショップを通しての作品制作も多数試み、映像が内包する拡張性や協働的な側面について模索している。主な映画祭での上映にバンクーバー国際映画祭、香港国際映画祭、オーバーハウゼン国際短編映画祭、カッセル・ドキュメンタリー・フィルム&ビデオ・フェスティバルなど。『景色の映画』(2001)がイメージフォーラムフェスティバル2002で審査員特別賞を受賞。
    https://kanyukuyuki.tumblr.com/