映像作家への第1歩
多くの映像作家を輩出してきたイメージフォーラム映像研究所の2023年度(第47期)卒業制作展。
今年は映像アートコース、アニメーションコース、専科コース合わせて27作品を4プログラムで上映。
1年を通じて築かれたイメージが鮮やかに結実する、映像作家への第1歩。
上映プログラム
牧人山水動図 加藤 智也 / 5分 / 2024年〈アニメ〉
このアニメーションでやりたかったことは、雪舟の筆づかいを感じ、峰々が動いた時点で、完成が見えていた。
今はただ、そこに愚かにも個人的でチープな讃を500年越しに描き加えてしまったことを反省している。
Light Fragments 朝倉 小冬深 / 7分 / 2024年〈アニメ〉
睡眠と覚醒の間に浮遊し、記憶の中で反復する光の幻影。(A.S)
キムス・ゲーム 阿部 修一郎 / 7分 / 2024年〈映像〉
「キムス・ゲーム」とは、ボーイスカウトで行われている記憶力を試すゲームである。何かが失われたのち、そこに何が在ったか、どのように在ったかを知ることはしばしば難しい。不在の対象を想像することは、いかにして可能だろうか。(A.S)
みずのなかのゆめ ショウ イハン / 5分 / 2024年〈アニメ〉
ある過去の思い出。何度描いても、何度重ねても、次から次へと、やはり元の景色を再現できない。触れたいけど永遠に触れられない。ビスケットとギョウザは水の中で、儚い夢の中にいる。(J.Y)
Yuika Paris Kicker マガロン エメ / 15分 / 2024年〈映像〉
ゆいかは大学の同級生。ロンドンとパリの旅の中でゆいかは私の記憶をみちびく。(M.A)
祈りの尻尾 大西 和裕 / 9分 / 2024年〈映像〉
ただ漂うだけの時間の中で掴みかけた祈りの尻尾。
足元に咲く花々や小鳥たちはいつもそばで語りかけていた。(O.K)
停留所にて 若林 みちる / 20分 / 2024年〈映像〉
戦争のとき、暗闇の中でじっと息をひそめた住民たち。時が経ち、停留所が並んだ道は吹き抜ける潮風の香りに包まれ、島の中をさまよい続ける住民たちの拠り所となった。
彼らは、ゆっくりと現れたバスに乗り込み、目的地へと向かうのであった。(W.M)
※チラシに情報掲載しておりました『release calm flow』(3分)は、作者の都合により上映取りやめとなりました。何卒ご了承下さい。
Peel Off 中田 喜之 / 7分 / 2024年〈映像〉
野菜を描く男。
キャベツやタマネギは皮を剥くと新しい皮が現れる。
映像の皮を剥く。
剥き続ければ中心に辿り着く。
その先には外へと向かう皮がある。(N.Y)
さようなら、肉 中絲悠 / 5分 / 2024年〈映像〉
肉は皮膚に包まれながら、なりをひそめる。他者の嘘や欺瞞という皮膚を切り裂いて、その内側にある肉を覗かんとする欲望が今、インターネットの中で蠢いている。仮想空間上の屠殺、行き場を失う僕たちの肉が向かうところ、caro valeの両義性。(N)
Lの探偵〜序章〜 2億5000万分の1の"七" ソウ ケイイチ / 10分 / 2024年〈映像〉
〈オヤジ〉から極秘任務で探し物を命じられた俺は、風の噂で”探し物のプロ”だという幼馴染に連絡を取ったのだが......
一人称視点で展開されるおバカなショートムービー。実験映画とは?(S.K)
腹鳴恐怖症 小沼 亜未 / 5分 / 2024年〈アニメ〉
ぐー。お腹が鳴ってしまった。恥ずかしい。止めたいのに止められない。(K.A)
Tobeornottobe 森田 諒一 / 10分 / 2024年〈映像〉
わたしの『葉武列土倭錦絵』。ぐだぐだと沼にはまっていくような景色、演技を探しにいこう。(M.R)
22×1 伊藤 若那 / 17分 / 2024年〈映像〉
22歳自分。ただ自分を映してみて。映される自分とそれを見る自分の記憶と感覚のプクプク達。
あと私に現れるひとも。物体も。(I.W)
満ち欠け 石田 百合 / 2分 / 2024年〈アニメ〉
その遠い歌を聴きとれたなら、眠りの淵にたどり着く。
迎えの小舟がいつも来るとは限らない。
版画によるアニメーション。(I.Y)
くるりんぱ深呼吸 長谷川 謙之直 / 14分 / 2024年〈映像〉
水の中で伸び上陸後、赤のまろみに歪む、ゆっくりと吸ってゆっくりと吐きながら。(H.K)
Breath 大橋 美月 / 9分 / 2024年〈映像〉
水面に映る雑草や雲、稲穂の揺れる田園風景、畑の耕された痕跡...
私達の暮らしに潜む自然はどこか妖しくも懐古的だ。
私を語るように世界と語らう。詩の行間を綱渡りするように、レンズの無垢な眼差しは私と世界との境界を溶かしていく…。(O.M)
心が正しい ショウ エイショウ / 4分 / 2024年〈アニメ〉
みなぎれ!なみだたち 住本 尚子 / 5分 / 2024年〈アニメ〉
わたしの流した涙はどこへゆくの?悲しみや憤りや悔しさ。行き場のない感情が涙に形を変え、その涙たちが結託した世界があるとしたらどんなに素晴らしいか!涙はまるで血のように、傷つけられたら流れて当然!至極全う!涙は誰にも止・め・ら・れ・な・い!(S.N)
A Chronicle of Chronic Diseases 万里 Madeno / 22分 / 2024年〈映像〉
”私/僕”は新人記者だった。その年の冬、災害の被災地に放り込まれた体験は、メディアの暴力性についての疑念と自責を痛烈に刻みつけた。この国に災厄が訪れる度に感じる痛み。”私/僕”は、メディアの“慢性疾患”について、身体的に語り直そうと試みる。(M)
だれの記憶 Kohei Okumura / 13分 / 2024年〈映像〉
ディスクに保存された大量のクリップ。僕が撮影した映像で、僕の記憶のはずなのに、その実感がない。一体だれの記憶なのだろうか。(O.K)
音に関する小作品集 山 裕也 / 20分 / 2024年〈映像〉
実験音楽家アルヴィン・ルシエにインスピレーションを得た「赤」「青」、色聴をテーマにした作品で、色相に対して明度を音階にあてはめた「絶対明音感育成装置」、ピアノに対する疑問と憧憬を映像化した「ピアノ・コンプレックス」の3作。(Y.Y)
※チラシに情報掲載しておりました『INTERLUDE』(3分)は、作者の都合により上映取りやめとなりました。何卒ご了承下さい。
長野旅行 勝俣 創介 / 28分 / 2023年 (※前年度映像アートコース卒業制作)
カメラマンをやってる友人と長野旅行へ。最近映像を撮りはじめた僕が、友人にカメラの使い方を教えてもらいながら、なんとなく回していく。自分の目ではない、レンズが対象を眼差す違和感を楽しみながら。(K.S)
手のひらの水なも 北川 未来 / 15分 / 2023年 (※前年度映像アートコース卒業制作)
「思い出す」という行為は、静かで力強い。
このことをどうやって映像で表現できるのか。
記憶は過去のものではなく、今の自分が作り出しているもの。
常に変化し、留まることなく、流れ続けていくものだと信じて制作しました。(K.M)
jalan jalan 勝俣 創介 / 12分 / 2024年〈専科〉
10年ぶりに、昔住んでいた町へ。変わったような、変わっていないような。懐かしいような、懐かしさとは違うような。そんなことを考えながら、jalan jalan(散歩:マレーシア語)した数日間の記録。(K.S)
誰もおらん家 北川 未来 / 15分 / 2024年〈専科〉
福井県にある祖母が住んでいた家。
今は誰もいない家の中で、聞いていたこと、夢みていたこと。
時々窓の奥で通り過ぎる電車と、猫とおまんじゅう。(K.K)
映像:映像アートコース
アニメ:アニメーションコース
専科:専科コース