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No.1038 村岡由梨映像個展
〈眠れる花〉
2021 6/6 Sun.,6/13 Sun.

      タイムテーブル

    日付 6/6 6/13
    14:00
    16:00
    ※各日16:00の回上映後にティーチインあり

      会場 Venue

    • イメージフォーラム3F「寺山修司」
      東京都渋谷区渋谷2-10-2
      TEL. 03-5766-0116

      Image Forum 3F "Terayama Shuji"
      2-10-2, Shibuya, Shibuya-ku
      TEL. 03-5766-0116

      当日受付 Door

    • 一般1回券700円/会員1回券500円(各回15分前より受付)

  • dance

    The Miracle

  • EDEN

    ランテルディU

  • For rest

    スキゾフレニア

  • 13

    透明な世界
  • 13

    イデア





  • イントロダクション

    そういえば、村岡さんの映画はよくアメリカの実験映画作家ケネス・アンガーに例えられていた。2003年に制作された最初の作品『The Miracle』はイメージフォーラム映像研究所で同期だったので、卒業制作展で見たが、絢爛な象徴主義的、神秘主義的スタイルで彩られており、儀式のように展開していく物語に目を瞠ったものだった。自演するという点ではむしろマヤ・デレンに例えることもできるかもしれない。全ては作者自身の「ポートレート」だというのだが、セルフ・ドキュメンタリーのようなポートレートを想像していると度肝を抜かれることになる。そこには表現に駆り立てられる作者の感情があふれており、自分の肉体をキャンバスにして絵を描くというのか(実際そういうカットもある)、自身が彫刻の素材になるというのか、作者の生み出すイメージと本人そのものの境界が曖昧になったカオティックでインパクトのある映像世界が生み出されていく。
    今回のシネマテークは、新作『透明な私』が今年5月の第67回オーバーハウゼン国際短編映画祭でグランプリを受賞し、さらに国際的に評価の高まる村岡由梨の過去作5作品をまとめて上映する貴重な機会となります。ぜひお楽しみください。また、自作を引用しつつ、「変わったもの、変わらないもの」に向き合う新作をより深く鑑賞するための予習の時間にもしていただきたいと思います。(イメージフォーラム門脇健路)

    上映作品(5作品/59分)

    The Miracle  16ミリ/18分/2003
    ランテルディU  16ミリ/7分/2003
    スキゾフレニア  16ミリ/10分/2016
    透明な世界  16ミリ・デジタル/7分/2019
    イデア  デジタル/17分/2019


    作品解説

    The Miracle
    2001年12月、飼っていた小鳥のSurrealisticが死んだ時、傍では「第9」が鳴り響いていました。私はこの作品を、Sを生き返らせること、時間という存在をこの手で殺すことを目的として作りました。また、この作品は、私の核(私=パラドックス)を視覚化する初めての試みでもありました。白・黒・赤・青(赤女×1=青男×3)という色は、私の核(私=パラドックス)を構成する基本的な要素の一部です。(Y.M.)

    ランテルディU
    『L'INTERDIT』(2004)の続編。黒キャンバスが黄緑キャンバスに見つめられ見つめ返した時、「悲しい」や「嬉しい」といった言葉では形容しきれないような、全く未知の、新しい、オリジナルな感情と出会いました。黒キャンバスは黄緑キャンバスを愛し、時には欲情します。決して叶うことのない願いだと知りながらも、いつも黄緑キャンバスのそばにいたい、独り占めしたいという欲求は募るばかりです。(Y.M.)

    スキゾフレニア
    統合失調症(スキゾフレニア)の治療を始めて7年目の自画像。 日々の暮らしの中で、私を苦しめる、「奇数」という名の強迫観念(第1章「the odd numbers」)と、 死刑宣告を受けて、刑壇が落下する音と共に、「現実」が足元から瓦解する、自我の崩壊の恐怖(第2章「透明な私」)。 私は今、本当に、ここに存在しているのでしょうか。 今、このキーボードをたたいているのは、本当に、私なのでしょうか。 このキーボードは、本当に、ここに存在しているのでしょうか。 この椅子は、本当に、ここに存在しているのでしょうか。 この床は、本当に、ここに存在しているのでしょうか。 五感が、瞬く間に、透明になっていく。 自分の表現に真摯に取り組むこと、そして、それを続けること。 この2点が、私が表現を続けて行く上で大切なことで、 それ以外のことは、大して重要ではないと、近頃特に思います。 いいえ、それ以外のことで、重要なことがありました。 眠と花です。 私は、眠と花の母親です。 二人の娘のことが、愛おしくてたまらない。 生き続けなければならない 透明な私(Y.M.)

    透明な世界
    2018年現在の「私」と「世界/社会」の関係性を表した、私と娘たちのポートレート。これは私の内部と外部で起こる激しい二項対立の物語。「私」と「世界/社会」の間を行きつ戻りつしながら、娘たちは私的な存在から社会的/普遍的な象徴へと変化し、「赤」の定義は「生命」に拡張、手足を失った(無力で宗教的な)ダルマとして登場する。「白」と「黒」は単純な二項対立の枠を超えて、「灰色」の概念を孕み出す。そして様々な色が混じり合った世界は、いつしか「透明」になる。「個」を貫き通せば、それはやがて「世界」となる。それは、私が創作活動を通して目指す地平でもあり、この世界の有り様も表しているのではないだろうか。(Y.M.)

    イデア
    永遠に続くと思っていた関係にも、いつか終わりの時がやってくる。大切な人を胸に抱いている時。温かい生きものの息遣いを感じながら眠りにつく時。この世界には決して叶うことが無い願いがあるということを、私たちは知った。壊れてしまった家族の記憶と、壊れそうな家族。胸に溜まる水で呼吸もままならず、じっと死を待つ猫と共に生きる日々を綴った映画です。(Y.M.)

    村岡由梨

    1981年東京生まれ。日本女子大学附属高等学校中途退学、イメージフォーラム映像研究所卒業。一貫して「セルフポートレート」にこだわった自作自演の映像・写真作品などを制作、出演・美術・撮影などのほとんどを自ら行う。統合失調症の治療に伴い、2009年より作家活動を休止、2016年本格的に再開。2児の母。

    【主な受賞歴】
    せんだいアートアニュアル2005 グランプリ(smt賞)
    第9回タグボートアワード 準グランプリ
    第14回「1_WALL」写真部門 審査員奨励賞(飯沢耕太郎選)
    イメージフォーラム・フェスティバル2016一般公募部門「ジャパン・トゥモロウ」優秀賞
    第12回札幌国際短編映画祭 スペシャル・メンション
    SICF19 石田尚志賞
    第67回オーバーハウゼン国際短編映画祭インターナショナル・コンペティション グランプリ