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講師紹介

 
石田尚志
画家、映像作家、多摩美術大学准教授
profile
絵を描く行為そのものに着目し、ドローイング・アニメーションの技法を使ってダイナミックな「動く絵」を制作。インスタレーションやライブパフォーマンスなど領域を横断しながら創作を続けている。1990年から本格的に絵画制作を開始し、1992年からは映像作品を制作。『部屋/形態』(99)がイメージフォーラム・フェスティバル1999で特選に選ばれる。以降、愛知芸術文化センターオリジナル映像作品『フーガの技法』(01)、『海の絵』(07)、『白い部屋』(12)などを制作。国際的な映画祭や美術展で高い評価を得る。2007年に第18回五島文化記念賞新人賞受賞。2015年には横浜美術館で個展「石田尚志 渦まく光」を開催。
message
【本物がいる場所】 随分前になるが、自分はここで学んだ。あれだけ好きなように描いていた絵画が、どこまで描いても完成しなくなった時だった。ああこれは留まることをやめてしまえば良いのかもしれないと感じた。そして夢の島やアルタ前で音楽をスケッチするライブ・ドローイングをやった。20代初め、イメージフォーラムに行く直前のことだった。 描いた絵はゴミになったが、確かに身体的な欲望は満たされた。友人が記録してくれたビデオには伸びていく線が克明に残されていた。だが、その映像には大きな問題が一つあった。線だけでなく、自分の身体が一緒に記録されていたのだ。当たり前のことだが、それが始まりだった。一つの欲望が生まれた。自分は伸びゆく線を見たくて線を伸ばしていたのだから、自分の体は必要ない。線そのものになる方法を求め、考え始めた。曇りガラスの裏から描いてみたり、Hi8のビデオカメラで無理やりコマ撮りをしてアニメーションのようなものを作った。そして友人のHi8のカメラを壊してしまって、これはいよいよフィルムで、1秒24コマでやらなければならないと思った。 イメージフォーラムの門を叩いたのはその直後だった。それはとても大きなことだった。たった1年だったが、自分の技法を見つけ、自分の原点となる作品を作ることができた。そして巨匠達の存在を知った。フィッシンガー、ルットマン、リヒター、エッゲリング、ライ。それはどれも音楽と絵画の戦いだった。そして相原信洋と黒坂圭太から学べた。「さよなら銀河鉄道999」のスターゲート・コリドーを小学校の時に渋谷パンテオンの湾曲する巨大スクリーンで観た自分にとって、相原信洋に出逢うことは筆舌に尽くしがたき感動だった。そして黒坂圭太はレンブラントの絵を音雲の青空のなかで摩滅させていた。そのような豊かなことが、映像の中でいくつも起こっていた。見ることの冒険のオンパレード。本当の実験。ここにはたくさんの本物の作家が集まっていた。それは心底あまりに面白いことだった。彼らがいた場所にあらためて向き合う、そのことの意味は大きい。

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