小瀬村真美
美術家
profile
東京藝術大学油画専攻准教授。絵画の構図を巧みに利用し、アニメーションを使用した映像インスタレーションや写真作品を手がける。野村美術賞(2005年)、五島記念文化賞(2015年)などを受賞。アジアソサイエティ美術館のニューメディアアートコレクションの他、東京都現代美術館、東京藝術大学、関渡美術館(台湾)、群馬県立館林美術館などに作品収蔵。原美術館で個展(2018年、東京)。「MOTアニュアル2004」東京都現代美術館や、「第一回恵比寿映像祭」東京都写真美術館(2009年)をはじめ、横浜美術館、Freer&Sackler Galleries(アメリカ)、国立国際美術館、Kunsthal KAdE(オランダ)、水戸芸術館など国内外の展示や映画祭に参加。2025年は瀬戸内国際芸術祭等に参加予定。
message
発見と格闘の日々へ
イメージフォーラムに私が通ったのは、美大の大学院生の時でした。絵画科に所属していた私の日常は、絵画を中心としてのアート作品をどう制作するか?を考える日々でしたが、そこにイメージフォーラムは映像という別の視点と私のその日常自体を外側から見る客観性をもたらしてくれました。独自の絵画や視覚芸術をどう作っていくか、について悩んでいた私は「イメージ(ビジュアル)をどう作るか」だけを考えていました。しかし、制作をすることとはそんな簡単なものではありませんでした。イメージフォーラムを通して実験映画を知り、カメラと格闘し、先生方や友人の考え方の違いをシャワーのように浴びた日々は、私に表現する以前の「ものをどうみるか」について考えることの重要性に気づかせてくれました。この時期に知ったアメリカの映画監督スタン・ブラッケ-ジ(Stan Brakhage 1933-2003)の言葉で今も思い出すものがあります。作品制作はgive&takeではなくtake & giveだと。カメラという眼を持って日常をtakeする事、そして自分が得た物を映画という表現へとgiveする事。多くの有益な情報をtake(観察と発見)出来るようになって、はじめてアイデアは生まれ、自分のイメージどおりに作品へとgiveする事が出来るようになる。これは映像だけではなく、全ての作品制作に言える言葉と思います。
イメージフォーラムは専門学校でも大学でもない純粋な制作者の集まり、という今の日本ではかなり貴重な存在の学校だと思います。単位をとるためでなく、単に映像を知り制作したいと思う人だけが集まる稀有な場所です。そして、そのばらばらな背景を持つ人々が人生の中でたった1年、映像と制作と格闘しながら深い交流を交わします。そんな時期に時間を共にする一員として、制作を通してみなさんの新鮮なものの見方に触れることができることを楽しみにしています。