韓国インディペンデント映画2006
セックスとジェンダー
2006/7/26 韓国インディペンデント映画2006サイト公開!
韓国インディペンデント映画2006 セックスとジェンダー

期間:2006年8月19日(土)〜8月25日(金)
会場:シアター・イメージフォーラム(東京都渋谷区渋谷2-10-2)
作品:7プログラム/24作品

主催:イメージフォーラム
共催:駐日韓国大使館 韓国文化院
支援:文化庁
特別協力:韓国映画振興委員会(KOFIC)

プログラマー:トニー・レインズ(イギリス)

料金:当日1回券 1,200円
前売1回券 1,000円
タブーを打破するエキサイティングな作品群

セックスとジェンダー。活況を呈する韓国映画界が“セックスとジェンダー”を重要なテーマとするのは当然かもしれないが、この2つが昨年の韓国インディペンデント映画の動向において中核をなしていたことは間違いない。それはなぜか? おそらく、この状況はフランコの死を以って全体主義的な政権が終焉を迎え、長らく抑圧されていたポップ・カルチャーが突如としてロケットさながらに発進し始めた頃のスペインに類似しているのかもしれない。スペインにおいて、このムーヴメント(<モヴィーダ>と呼ばれている)はペドロ・アルモドバルが映画界で躍進するきっかけとなったことで知られているし、マドリードを驚くべき自由都市に変貌させてもいる。「韓国のアルモドバル」との異名をとる者もいなければ、ソウルを「東アジアのマドリード」と呼ぶ者もいないが、韓国で起きていることはスペインの反復にほかならない。性別による役割が石に刻まれたがごとく固定化され、性的な事柄が隠し通された数十年間(数百年、というべきだろうか?)は過去のものとなり、韓国のインディペンデント映画作家たちはかつてタブーとされていた領域に自国の文化を導いていこうとしているのだ。

今年のセレクション作品は、特定の切り口を示すために選ばれたわけではない。2週間に渡ってソウルとチョンジュ映画祭で集中的に作品を見ていった過程で、私たちはひたすら独創的かつ革新的でエキサイティングな作品を発見し、やがて徐々にではあるが、選ばれた作品の大半(すべてではない)にセックスとジェンダーの問題が描き込まれていることに気づいたのである。改めて言わせていただくが、この映画祭は広範囲に及ぶインディペンデント映画を例示しようとしてきた。短編、フィクション、ドキュメンタリー、実験的作品、あらゆるタイプのアニメーション、そしてもちろんインディペンデントな長編劇映画などである。今年は懐かしい顔ぶれとの再会も果たすとともに(常に創意豊かなキム兄弟やアニメーターのイ・ソンガン、エッセイストで歴史学者でもあるキム・ホンジュン)、嬉しいことに驚嘆すべき新しい才能も数多くご紹介することになった。2004年と2005年に続き、今年のプログラムも価値あるものになると確信している。最高に挑発的なセレクションに、是非期待していただきたい。

トニー・レインズ(映画批評家・映画作家、韓国インディペンデント映画2006プログラマー/イギリス)
●Aプログラム (2作品/85分)
『顔のないものたち』 監督 : キム・キョンムク 2005年/video/65分
『僕と人形遊び』 監督 : キム・キョンムク 2004年/video/20分

20代前半という若さながら、キム・キョンモクは並外れた才能の持ち主である。性の冒険者にしてフォルマリストでもある彼は、たぐいまれな演出家であり、挑発者でもあるのだ。彼の処女作『顔のないものたち』はかなり直截的にゲイ男性のサドマゾヒズムを描いているため、一部の観客はそのジャン・ジュネ的な内容にショックを受け、作品のコンセプトや構成を支える技術と、洗練された話法を見逃してしまうかもしれない。この作品は、わずか3つのショット(ドラマ、ドキュメンタリー、そしてそれ以外の何か)で構成されている。併映の『僕と人形遊び』はキム監督の自伝的な短篇で、告白とアニメーション、ジェンダー理論を結合させた作品である。

●Bプログラム (1作品/100分)
『ゲオ・ロボトミー』 監督 : キム・ゴク、キム・ソン 2006年/video/100分

亡霊によって語られる『ゲオ・ロボトミー』の舞台は、サブクという名の荒廃した炭坑町である。時は、昨日も明日も存在しない永遠の現在。監督のキム兄弟は魅力的な登場人物たち(罪深い秘密を持つ死人の坑夫、彼のところに居候する男、坑夫のアル中息子、若き女性闘士、金歯の商人)を一同に集め、喜劇的な不条理と恐怖が渾然一体となったタイムスリップ・ドラマを作り上げた。全編を貫くのは、「人(そして国家)はどうやってスピーディに富を得るか?」「政治活動は役に立つのか?」「肉体労働に尊厳はあるのか?」、そして「ベネズエラってどこ?」といった疑問の数々である。

●Cプログラム (1作品/111分)
『ショッキング・ファミリー』 監督 : キョンスン 2006年/video/111分

 「家族」の暴虐性についての映画を作るために、世代も境遇も異なる4人の女性たちが集結する。彼女たちは家族との決別を示すべく名字を捨て、いまだ韓国の女性にはあまり例を見ない「独立した一個人」という地位を勝ち得ようとしている。しかし、常に資金や機材の不足に見舞われるインディペンデント映画の製作こそが独立への道に立ちはだかる壁だったのである。そこで彼女たちは自身の苦境をカメラに収め、ドキュメンタリーを撮ろうと決意する。それは日記やエッセイ、あるいは議論に見えるが、非常に滑稽で、心揺さぶられるドキュメンタリーなのだった。

●Dプログラム (1作品/100分)
『肌』 監督 : イ・ソンガン 2005年/35mm/100分

イ・ソンガンの実写長編第1作目となるこの作品は、彼のアニメーション作品とはあまりにかけ離れているため、彼は二重人格者なのではないかと思う人もいるかもしれない。タブロイド紙の記者であるミンウは昔の彼女(現在は既婚)と偶然の再会を果たし、彼女は彼と9回セックスすると約束した。それだけでも頭が混乱しそうなのに、彼は深夜にひき逃げ事故を目撃。さらに、引っ越した部屋には前の住人の持ち物が山のように残されていた。以前の住人は今風の若い女性で、性転換を目前に控えたゲイの少年と関係しているらしい。やがてミンウは彼女の意識に影響されはじめていくが・・・。豊かなイマジネーションと美しい映像に彩られた作品である。

●Eプログラム 短篇集『ストーリーズ』(6作品/92分)
『カー・セックス』 監督:イ・ジョンア 2005/35mm/4min
『ダンシング・ボーイ』 監督:ぺ・ジヨン 2006/video/20min
『外泊許可』 監督:イ・ジョンユン 2005/35mm/13min
『狂気の歴史』 監督:カン・ミンソク 2005/35mm/19min
『難しいお願い』 監督:キム・キヒョン 2006/35mm/19min
『呼吸しろ』 監督:キム・ミョンヒ 2005/16mm/17分

「セックスとジェンダー」というテーマを見事に体現した6本の短篇は、KAFA(韓国映画アカデミー)とKNUA(韓国芸術綜合学校)が製作した作品が各2本、自主制作作品2本という布陣である。『カー・セックス』は大いなるフェミニストのジョークとでも呼ぶべき作品。『ダンシング・ボーイ』と『要求』の2本は、自らの不安定な性と対峙できない若い男性を描いた小品である。『狂気の歴史』と『呼吸しろ』は、男と女が己の欲望を遮断したら何が起きるかを追究した、シュールレアリスム的なサスペンス劇の一種。そして『外泊許可』は兵役が韓国の男性に与える影響を描いた力強くショッキングな作品である。

●Fプログラム 短篇集『事実と反論』(4作品/89分)
『カサブランカ』 監督:キム・ジョングク 2006/video/11min
『マイ・コリアン・シネマ第6章+第7章』 監督:キム・ホンジュン 2006/video/30min
『もう続けられない』 監督:ユン・ソンホ 2005/35mm/21min
『政党政治の逆襲』 監督:キム・ゴク、キム・ソン 2005/16mm/27min

形式にとらわれないバラエティ豊かなプログラム。ここでは、フィクションを形づくる要素が、詳細に表から裏まで検証されるべきものとして扱われている。『もう続けられない』はMTVの嘘を憂い、映画と革命を熱望する作品。『政党政治の逆襲』で、監督のキム兄弟はホラー映画やアクション映画を、父親、母親、猿、ゲリラの、身の毛もよだつ恐ろしい物語へと脱構築する。『カサブランカ』は映画監督志望の男を唯物論者的な視点から描いた作品。そして、キム・ホンジュン監督によるシリーズ『マイ・コリアン・シネマ』の新たな2編は、韓国映画と日本の関係性が生み出した副産物について検証している。

●Gプログラム 短篇集『アニメ』(9作品/85分)
『第1幕 2章』 監督:業界1位 象工場 2006/video/11min
『お日さま』 監督:チームL.I.N 2005/video/7min
『部屋』 監督:ユ・ソクヒョン 2005/video/5min
『擬体 第2章』 監督:リンダ・キム 2005/video/7min
『アイデンティティ・クライシス』 監督:チョン・ヨンチャン 2005/video/5min
『サバ』 監督:イ・ソンヒ 2005/video/10min
『お客さん』 監督:イ・ウニョン 2006/35mm/10min
『スペース・パラダイス』 監督:イ・ミョンファ 2005/video/15min
『宇宙の記憶装置』 監督:チェ・グァンホ 2006/video/15min

新たな時代を担う韓国のアニメーターたちによる9本の短篇作品は、ローテクのパペット・アニメーションから超ハイテクのデジタル作品まで、ずらりと揃った傑作選である。ユーモア溢れる作品も見のがせない。『第幕 2章』はキリスト教徒が創造した神話を改訳してみせる興味深い作品であり、『アイデンティティ・クライシス』ではダーウィンによる種の起源が再構築され、『スペース・パラダイス』は昔懐かしいテレビのSF番組が放つ魅力をじっくりと見せる。確信犯的に人の心をかき乱そうとしている作品もある。『擬体 第2章』が描くのは、自分探しに取り組む女性についてのフロイト的な夢。そして『宇宙の記憶装置』は、少女を自殺から救おうとする少年の夢を描いている。残る4本も傑作揃い!
 
8/19(土)
8/20(日)
8/21(月)
8/22(火)
8/23(水)
8/24(木)
8/25(金)
11:30
B(100分)
E(92分)
F(89分)
F(89分)
G(85分)
B(100分)
E(92分)
14:00
C(111分)
F(89分)
E(92分)
G(85分)
B(100分)
F(89分)
D(100分)
16:30
D(100分)
G(85分)
B(100分)
E(92分)
C(111分)
G(85分)
C(111分)
19:00
A(85分)
D(100分)
C(111分)
A(85分)
A(85分)
D(100分)
A(85分)
ゲスト
キム・キョンムク監督(『顔のないもの』『僕と人形遊び』)
キョンスン監督(『ショッキング・ファミリー』)

参加予定ゲスト
キム・ホンジュン監督(『マイ・コリアン・シネマ第6章+第7章』)
キム・ジョングク監督(『カサブランカ』)