私の「回顧」の開催に訪日できず、とても残念です。現在「Where the Truth Lies(仮訳:真実の在るところ)」と題する新作の撮影に入っていることをお伝えし、ご了承いただければ幸いです。

私の作品の多くは、人々の歩みが互いに交差し、態度や知覚を改めたり、問い直したりせざるをえない瞬間を扱っています。今回のような「回顧」は、多年にわたり私が共に暮らしてきた想像上の人たちと再会し、観客の皆さんに私の“家族”としてご紹介する機会を作ってくれます。

彼らはユニークな家族です。多くは過去に負った傷を今もひきずり、自分の身に起きたことを理解しようと務めながら記憶の海に漂っているように見えるかもしれません。真の触れ合いに疑念や恐れを抱くあまり、互いに相手を単なる影像として捉えることしかできない場合が多いのです。

“真の触れ合い”とは何でしょう?他人の経験の世界にわが身を投じる方法を、私たちは実際にどうやって探しだすのでしょうか?いかなる形であれ、人と人の出会いに秘められた不思議、人間的な触れ合いを持つには避けて通れない境界の探求といったものに私は心惹かれます。

このような交流を試みる上で、「回顧」は特別の場と言えます。私は今までに何度も日本を訪れ、過去の巨匠たちや洞察力溢れる現代の作家たちを擁する豊かな映画芸術の伝統に深い感銘を受けました。インスピレーションの大きな源である日本で私の作品をまとめて上映する機会を得、大変光栄に思います。

2004年10月1日
アトム・エゴヤン