我が映画旋律
<< 画=音 >>をテーマにして制作。サウンドトラックにはみだした映像がそのまま音となる。<画は音>であり、<音は画>である。機織りの筬が、お寺の塀が、金網のほつれが、ホテイアオイが、星の砂が、メロディーを奏でる。初めて耳にする映像そのものの音。古典的な映画のメカニズムから生み出した、究極の映像表現。それが<映画旋律>である。
映画の映されない部分をあぶりだす為に、X線で撮影したオリジナルな映像に加え、サイレントフレームの35ミリ・ムービーカメラを有効に利用。映画の構造をダイレクトにヴィジュアル化した。
(奥山順市)
The Trains
映像で音楽を奏でる試み。通り過ぎる山手線。これが基本のワンショット。通過するごとにその車両は短くなり。ついには輪切り状になった車両がビュンビュンと走る。走行音は拍子を刻み、音階を奏で、複雑化して合唱を始める!
unconscious
雨の日の散歩は面白い。古くなった壁、電信柱、錆びついたマンホール。それらの汚れは降る雨によって洗い流され、一方で加速し、更に深みを増していく。この作品は、日常生活において意識しない部分を抽出し、その中にあるうつくしさを探っている。
(中島雄介)
Mystic Tube#1 揺れている、逃げている
「ある巡礼者が音楽を奏でながら巡礼地へと赴く途中にあるトンネルを通過する。」という単純な共通プロットを連作してゆく「Mystic Tube」シリーズ第1作目。テーマは「音源の移動とそれに伴う残響の変化」だけに限定されている。ここでは、私自らが演ずる巡礼者による無伴奏喉歌のドローンと自然倍音のハーモニーが、長さ650m、残響10秒を超える直線トンネル内で次第に変容しながら、音楽の抽象性と映画のプレゼンスとが、暗闇の中で交差する。
(帯谷有理)
He may solve the problem by using his logic.
パソコンの英会話練習ソフトのネイティブ・スピーキングに必死に追随する作者の声。もはや文章の意味や活用、コミュニケーションは吹き飛んで、呪文の様に同じ文章を繰り返す。
流暢な英会話への盲目的決意、反復、いつしか訪れるグルーブ。
フリー・ラディカルス
題名は現代物理学でエネルギー分子を指すが、視覚的には未開社会の芸術を思わせる。黒味フィルムへのスクラッチ。
空間の粒子
黒味フィルムのスクラッチとアフリカン・ドラムを組み合せたレン・ライ最後の作品。
エマルジョン・ペインター
スクリーンに投影されたフィルムを観る時、感光乳剤であるエマルジョンそのものを意識する事はない。僕は、エマルジョンそのものをイメージとして捉え、物体としてのフィルムを強調する為、フィルムに直接ブラシでエマルジョンを塗りつけ、厚みの変化やムラ、点と線、アワなどを出現させた。
(奥山順市)
上映作品
我が映画旋律 奥山順市/16ミリ/6分/1980
The Trains ひらたたかひろ/ビデオ/8分/2004
unconscious 中島雄介/ビデオ/5分/2007
Mystic Tube#1 揺れている、逃げている
帯谷有理/ビデオ/15分/2008
He may solve the problem by using his logic. 能瀬大助/ビデオ/12分/2006
フリー・ラディカルス レン・ライ/16ミリ/5分/1958
空間の粒子 レン・ライ/16ミリ/4分/1979
エマルジョン・ペインター 奥山順市/16ミリ/6分/2009