アニメーションを作る者の心理は、すべり台で遊ぶ子供の様だと思っている。1段ずつ階段を登って自分の位置エネルギーを溜めていき、最高点から惜しげもなく運動エネルギーに変えてしまう。軽いめまいに似た、つかの間の滑走の快感。積み上げたものを一瞬にして気持ちの良いものに変える中毒的な行為。それは、大量に描いた原画を動画化するアニメーション作家だけが知るモチベーションであり、彼らが長い年月、エネルギッシュな制作活動を続けられる秘密なのだ。気持ちがよいから止められない。
相原信洋は1960年代から制作を続けるアニメーション作家であり、国内外で上映、パフォーマンス、ワークショップを数多く行っている。石田尚志はイメージフォーラム付属映像研究所を卒業後、画家/映像作家として内外で活動、レジデンスで新作上映、パフォーマンスを発表している。 2人の作家は年代もバックグラウンドも異なるが、抽象アニメーションの指向、それも個人的、肉体的ビジョンを投影するような線画アニメーションの指向に共通性が見られる。 原画にもあるように、余白恐怖のごとく高密度に描き込まれた1枚1枚が、滑らかにスクロールし、形を変え、四散してゆく様はまさに「絶景」といえる。(澤隆志)
Wind
風と身体、静止と動き、光、方向と流れ、流れと雲ノ 私にとっての日常的、基本となる記憶やイメージが、映像となってまさに自身の血の循環のように動きとなり、風となり、空中に踊って欲しい。
Yellow Snake
私の体内で動き回る2つのスクリーン。位置や速度が異なる両者は、ときに重なり、交じり合う。それは、何かアンバランスで、不可解だが2つの異なる混じりあいは、私にとってこれから続くところのパラドックス、迷宮の一部なのかもしれない。
部屋/形態
そもそもの目的は、欲望の赴くまま思いきり絵を描き連ねる事だった。実際の部屋に描いた「図と地」「内と外」「窓と壁」。描かれる場所と描かれない場所。そして、それ自体を見る位置としての「奥行き」。結果的に、カメラの中という「密度」の壁をペンキで塗り続けていたのかもしれない。
フーガの技法
バッハ『フーガの技法』のそれぞれの主題を”聴き取る”ように描き進め、楽譜にそって”演奏”するように撮影する。身体的レベルにおける”歓び”は抽象や象徴の領域に開かれるが、映像表現の独自性として、遠近法と時間に還元される。
相原信洋
1944年生まれ。アニメーション作家。 主な作品に
1970-71 『やまかがし』
1973 『逢仙花』
1976 『雲の糸』
1980 『水倫』
1987 『映像(かげ)』(ロカルノ国際映画祭、ペサロ国際映画祭)
1991 『MASK』
1994 『気動』
1998 『YELLOW FISH』(アヌシー国際アニメーションフェスティバル)
2000 『WIND』(アヌシー国際アニメーションフェスティバル)
2004 『Memory of Red』
2005 『Yellow Night』(バンクーバー国際映画祭)
石田尚志
1972年生まれ。映像作家/画家。
1999 『部屋/形態』 (イメージフォーラムフェスティバル特選)
2001 『フーガの技法』 (愛知芸術文化センターオリジナル映像作品)
2003 『椅子とスクリーン』(イメージズ・フェスティバル(カナダ)最優秀国際映画賞
2005 『絵馬・絵巻』(世田谷美術館)
関連企画
映像作家徹底研究 5.
天才と狂人の狭間 "画狂" 対決!! 相原信洋VS石田尚志
山本精一氏に"存在そのものが奇跡"と言わしめた天才・相原信洋と遅れてきた天才・石田尚志という、
間違いなく世界最高峰の異なる世代の天才アニメーション作家2人と音楽家とのコラボレーションによるライブペインティング!!
出演: 相原信洋、石田尚志
セッション参加アーティスト: 吉田大吉、mani neumeier、成田 宗弘、AYA、千野 秀一、 向島ゆり子、morishigeyasumune
2月24日土曜日@ SuperDeluxe
スーパー・デラックス
106-0031東京都 港区 西麻布3.1.25 B1F
T: 03.5412.0515 | F: 03.5412.0516
開場 & 開演 18:00 | 学生2500円 (要学生証) | 前 3000円 | 当 3500円 (1 ドリンク付)
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