back  next
2005/8/12,13,14

実に憎むべき、わたくしであります。
なかったことにはさせません。かつて人を殺す責任を忠実に果たしたおじいちゃんたちの人生最後の戦いが始まった。戦争で何をさせられるかを知っておきましょう。

一見平和なこの日本の各地で、14人の老人が半世紀以上昔のことをたんたんと語っている。
様々な葛藤を経て、彼らの口をついて出てきた言葉は、まさに彼ら自身が体験、いや自ら行った壮絶な事実。
彼らは日本が本格的な侵略戦争を開始した1932年の満州事変から、敗戦までの日中15年戦争で、中国大陸にいた元皇軍兵士だった。
思い出したくない、しかし決して忘れることができない、まして、なかったことになどできない残虐な加虐行為の数々。
彼らはなぜ、いま語り始めたのか?
人間の行いうる狂気のような行為と弱さ、そして実際の戦争を伝えたいという痛切な思いで、勇気をもって行った告白、証言を、私たちが真剣に受け止めるまで、彼らの戦争は終わらない。
(『リーベンクイズ』とは、『日本鬼子』の中国語読みで、満州で皇軍兵士たちが襲ってきた際に、中国の人々が兵士たちを称して用いた言葉。)

作品概要
この作品は、日本が本格的な侵略戦争を開始した1932年の満州事変から、日本の敗戦までの日中15年戦争の軌跡と世界情勢を追いながら、中国大陸で侵略戦争の実行者となった元皇軍兵士14人を日本の各地に訪ね、彼らが行った加虐行為の告白を記録している。
彼らの生い立ち、学歴、職業は様々であり、軍隊での経歴も陸軍二等兵から下士官、将校、さらに憲兵、軍医と多岐にわたる。
中国人を虫けら同然の感覚で生体解剖、細菌実験を繰り返した軍医、731部隊隊員。自らの功績、名誉のために拷問、大量処刑を行った憲兵。上級者(古兵)の下級者(新兵)に対する私的制裁によって「上官の命令は天皇の命令である」という日本軍特有の軍隊貴校をたたき込まれ、人間性を喪失した兵士たち。
初年兵教育では生きた人間(中国人)を標的にして、銃剣で刺し殺す実的刺突という殺人訓練が頻繁に行われ、やがて兵士たちは人を殺すことに無感覚になっていった。
日本軍が共産党八路軍の根拠地にたいして行った掃討作戦は、住民の集団殺戮、生活基盤の徹底的破壊を目的とし、中国側が「三光」(殺しつくし、奪いつくし、焼きつくす)と名づけた情け容赦のないものであった。
部落への無差別攻撃、兵士・農民の区別無しの殺戮、捕虜の拷問と虐殺、食料・家畜の略奪、生活器具の破壊、放火、そして婦女子への強姦。
日米開戦によって国内の労働力不足に直面した日本は、軍による中国人狩り(労工狩り)を行い、日本へ強制連行した。その数約4万人。牛、豚並の扱いに、途中で死亡した中国人も数多くいた。
やがて、米軍の圧倒的物量を前に南洋諸島での玉砕が相次ぎ、日本の配色は決定的となっていく。中国戦線ではそんな日本の情勢を知らぬままに、中国人を地雷探知がわりに使っての物資運搬、強制連行した中国人農民の対する作戦秘匿のための大量殺害などが平然と行われてきたが、食料不足からついに人肉事件も引き起こされた。
終戦で、この作品の証言者14人のうち2人は中国国民党軍に加わり、1949年まで人民解放軍(中国共産党軍)と闘った。12人はシベリアに抑留され、強制労働に科せられた。
国共内戦に勝利した人民解放軍が中華人民共和国を建国した翌年の1950年、彼ら14人を含む1109人の日本人が対中国戦犯として、中華人民共和国の撫順(遼寧省)と太原(山西省)の戦犯管理所に拘禁された。
厳罰を覚悟していた戦犯たちは、周恩来の「戦犯とても人間である。その人格を尊重せよ」という主動により、人道的な暖かい処遇を受けた。やがて、彼らは人間的良心に目覚め、自らの在校を認め、中国人民に謝罪した。
 
「案と人間性を無くした残忍な姿であったということが、ひしひしと解ります。実に憎むべき私であります」
1956年、敗戦から11年後、中華人民共和国最高人民人民法院特別軍事法廷で、病死、自殺を除く1062人中45人だけが起訴され(判決は死刑、無期はなく、禁固8年から20年で抑留、拘留期間が算入され、殆どが満期前に釈放されている)、のこり1017人は起訴免除、即時釈放という寛大な処分を受け、日本への帰国が許された。
ところが、日本で彼らを待ち受けていたものは、<中共帰りの洗脳組>という偏見であった。公安、警察から監視され、就職にあたっても様々ないやがらせや妨害を受け続けたため、その暮らしは、とてもかの地で夢見ていた平穏な生活どころではなかった。
しかし、彼らは数奇な体験から得た反省をもとに、再び同じ過ちを犯さぬために、自らが行った侵略戦争の実態、残虐な加害の真実を語り続けてきた。それには様々な加藤の克服、大変な勇気が必要だった。
時の流れと無関心... しかし、彼らの贖罪に終わりはない。

「過去にメを閉ざすものは現在も見えなくなる。非人間的な行為を心に刻もうとしないものは、又そうした危険に陥る」...... 元西ドイツ大統領・ワイツゼッカー
(日本鬼子 パンフレットより)

リーベンクイズ/日本鬼子
受付
一般1200円 会員900円

上映作品
リーベンクイズ/日本鬼子  16ミリ/160分/2000
製作・監督:松井稔
製作・撮影:小栗謙一
制作:「日本鬼子」製作委員会

2001年トロイア国際映画祭シルバー・ドルフィン賞受賞
2001年ミュンヘン国際ドキュメンタリー映画祭特別賞受賞
2001年ベルリン国際映画祭正式出品
2001年トロント国際映画祭正式出品
2001年アムステルダム国際ドキュメンタリー映画祭正式出品
2001年ニューヨーク近代美術館ドキュメンタリー特集正式出品