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2005/5/15,22,29,6/5,10,12

ヤング・パースペクティヴ2005
このプログラムは「イメージフォーラム・フェスティバル2005」一般公募部門第1次審査通過作品からセレクトした 35作品を、テーマ別に8プログラムにしたものである。
風を可視化する試みのドラマ『風をとって』からはじまるプログラムAは「みえないものたち」とした。その風はアニメーションの動力となり(『ぼくらの風』)、人形や写真に命を吹き込み、精霊をかいま見せる(『KASHIKOKIMONO』)。
「語り/騙り」はナレーションが作品のイメージを倍加する構成をもった作品集。静止画や短いシ−クエンスをつらなる不可思議なストーリー(『RO』『像の話』)、呪文の様な独白(『まどろみたゆめ』)が観客の想像力を刺激する。
猟奇殺人や色街をモチーフにしたドラマ2編の「都市伝説」や、新たな話法の追及を試みた『ほおずき』『もう森へなんか行かない』、日常の緊張状態に翻弄される男達の青春ドラマ3編(「なしくずしの死」)、記憶と物語の再生をテーマにしたプログラム「記憶の縁取り」など、中・長編のドラマ作品が続く。それぞれ作品の内容やリズムに合致した構成や時間を持っており、劇映画の上映時間に無根拠に合わせるような風潮は過去のものとなった。
プログラムGは女性だけの世界を描いた転生の物語『サイクル』と、女性と禁畏にまつわる2つのエピソードからなるドキュメンタリー『元始、女性は太陽であった』によりセクシャリティの探求を行う。
無音のファウンド・フッテージ映画『FILM-FILM #03 -reversal-』で幕をあけるプログラムHは、「動く画」をリズミカルに聴く(効く)作品集。デジタル編集による音と映像の完全なシンクロ(『Piano Sonata』『ANONYMOUS』)や音像の追及(『SILVER BIRCH』『Landed』)に続き、一つの楽曲を"対象物"として、映像メディアと組み合わせて提示するアーティスト、大和川レコードによる新作ライブ・パフォーマンスとカップリングした。(澤隆志)

作品コメント
ぼくらの風●「風はどこから吹きはじめるのか」そんな想いをアニメーションで表現しました。作中の"虫の背中のフィルム"。その中の住人は、いったいどこに住んでいるのか、そんな不思議さも抱いてほしいと思います。(外山光男)
右脳と左脳の対話●右脳と左脳が混ざり合うイメージを抽象表現で表しました。理性と感情の波、消したい記憶といった日常的に繰り返される頭と心の葛藤をシンプルに表現し、直接脳に伝わればいいと思いました。(曽我樹理)
ひかりしたたる夜明け●見ていないものが見えるとき、見ていたものが見えなくなる瞬間。日常がそうであるように、またこのアニメーションも淡々と過ぎていき、その中で、白い画面に映りこむ残像が見る人の記憶となってくれればと望む。(河野悦子)
KASHIKOKIMONO●アニメーションとアニミスム(精霊信仰)は共にanima(生命・魂)を語源とする。本作品はこの3語によるとライアングルの中心に位置する作品として制作した。タイトルは柳田国男が日本の八百万の神々を定義するために作った言葉「可畏キモノ」である。(早川貴泰)
脂汗、共存空間、課長宇宙●ある男の精神の混乱を、時間の流れを操作できるという映画の特性を生かして描きたかった。(松本邦雄)
Primal Ocean 「接吻」●時間とともに薄れていく記憶や想い。私は「吉田由紀」という架空の人物を創りだし、私の記憶を再構築させてみた。多少の間違いや嘘があっても構わない。あの日の想いは今も変わらずに其処にあるのだから。(柳田純一)
まどろみたゆめ●うとうとしていたら夢を見た。家族でどこか知らない場所をさまよっている。似たような景色を知っている。節目節目で記念写真を撮っていた。どこかへ向かっているが、それがどこかは分からない。そもそも写真を撮るときだけ集まる自分たちは本当の家族なのだろうか。(池田那緒美)
象の話●「おとぎ話」と「現実をつよく意識する映像」とを合わせることにより『現実』を獲得することを目的とした。(伊東宣明)
ヒグラシのパラディ●京都に今も実在する忘れられた楽園、五條。仕事と食事だけの日々を淡々と過ごす一人の遊女は、ある日拾ったラジオから流れてきた「うさぎのうた」に聞き入る。五條楽園から口裂け女が誕生したという仮説をたて、自分が自分であることの意味を求めた女が得た解放と追放を描いた物語。(広岡理香+横山晴菜+由里進一)
赤ぱっち●耕地のごく一部の地域に伝わる人さらい伝承「赤ぱっち」。実は大正時代に、実際に起こった赤子殺しの犯人の通称だが、今となってはそのことを知る人もほとんどいない。忘れ去られてた「赤ぱっち」をキーワードに、現代におけるとりとめのない不安や恐怖の招待について考察する。(堀内佳子)
ほおずき●堕胎という事を通して、男と女の間に存在する決して分かりあえない領域を描きました。それは、静かに日常に忍び込み、男性には気づく間もなく、かつ決定的に二人の関係を損なわせてしまうものなのです。この作品では、その静かな闇の忍びよる足音にじっと耳をすませるようにして、被写体との距離感に注意して演出しました。(吉川久岳)
もう森へなんか行かない●私たちは常に何らかの欲望を持って生きているが、それらは一つにまとまることなくすれ違い、何処にも到達することができない。本作はmますます抽象化する世界に対する1つの手段、時代を映す鏡のようなものとして制作された。(incidents)
black sun●普段生活している中で感じる言葉にならないモヤモヤとした黒い感情、社会に対しての不満、自己の可能性と現実の社会とのギャップ等を表現できればと思い、制作しました。(近藤寛史)
悲劇で視るか、喜劇で視るか●単純なことですが、映像とはとても不安定な存在で、悲劇、喜劇は音により大きく左右されます。(田中隼)
なしくずしの志●私は、人の幸福とは「自分の役割に確信と納得が抱ける」ということではないかと思います。ある流れ作業に飲み込まれ、そのことを考えられない状況下にあっても、今一度その問いについて考えてみようとする様子を記録しておきたいと思いました。(木村文洋)
サイクル●祖母、母、娘。たった三人しかいない世界のサイクルが崩れたとき、母はどう行動し、娘は何を感じるのか。「生きる」ということが生活するということに直接繋がっていくというメッセージをこめました。(山根千枝)
Landed●我が家の飼いウサギと私のオジが同時期にガンになった。この体験に端を発して、"通過するもの"と"留まるもの"との間について描こうとした。(土屋貴史)
ANONYMOUS●「両手をたたくとパチンと鳴る」のであります。物理的な運動には必ず音が伴うものです。逆に、音が鳴る所には必ずなんらかの運動が伴います。「火のないところには煙は立たず」的な理屈(THE EGON)
大和川レコード(yamatogawarecord)について●阿佐田亘によるソロプロジェクト。 テーマは「風景の切断」。 日常をパーソナルな視点で切り取り、様々なメディア(テレビ映像、スクリーン映像、音記録物、歌、パフォーマンスetc)を用いたトータルな表現を試みる。なかでも、現在、核となっているメディアは“歌/楽曲"であり、この“歌/楽曲"をどのような聴衆環境(状況や会場、公演時間設定etc)

象の話
BLACK SUN
Griffon
受付(各回入替)
当日900円/会員600円/3回券2000円

上映作品
プログラムA みえないものたち
風をとって 鈴木野々歩/ビデオ/36分/2004
ぼくらの風 外山光男/ビデオ/5分/2005
KOUGAN 写楽/ビデオ/11分/2004
there 塚本美奈/ビデオ/7分/2004
境界点 坂田裕俊/ビデオ/9分/2004
右脳と左脳の対話 曽我樹理/ビデオ/5分/2004
ひかりしたたる夜明け 河野悦子/ビデオ/4分/2004
KASHIKOKIMONO 早川貴泰/ビデオ/9分/2004

プログラムB 語り/騙り
RO コジマキエ/ビデオ/14分/2004
Primal Ocean 「接吻」 柳田純一/ビデオ/15分/2005
脂汗、共存空間、課長宇宙
松本邦雄/ビデオ/17分/2004
まどろみたゆめ 池田那緒美/ビデオ/7分/2004
象の話 伊東宣明/ビデオ/17分/2005

プログラムC 都市伝説
ヒグラシのパラディ
広岡理香+横山晴菜+由里進一/ビデオ/18分/2004
赤ぱっち 堀内佳子/ビデオ/55分/2004

プログラムD ドラマから遠く離れて
ほおずき 吉川久岳/ビデオ/38分/2004
もう森へなんか行かない
incidents/ビデオ/44分/2005

プログラムE なしくずしの死
black sun 近藤寛史/ビデオ/10分/2004
悲劇で視るか、喜劇で視るか
田中隼/ビデオ/10分/2004
なしくずしの志 木村文洋/ビデオ/60分/2004

プログラムF 記憶の縁取り
箱 大寶祥吾/ビデオ/12分/2004
Time of Arch 吉田守/ビデオ/4分/2004
朝 杉田真一/16ミリ/62分/2005

プログラムG 女の定義
サイクル 山根千枝/ビデオ16分/2004
元始、女性は太陽であった
菅野久美子+西功/ビデオ/56分/2004

プログラムH Film is Music
FILM-FILM #03 -reversal- 大島慶太郎
 /16ミリ/10分/2004
美しき生命たちよいつまでも健やかなれ
瀧澤紗由梨/ビデオ/4分/2004
fancy 山口晋/ビデオ/5分/2004
アリサンダー 佐藤槙梨子/ビデオ/11分/2005
SILVER BIRCH 石黒芳典/ビデオ/6分/2004
Griffon 田中廣太郎/ビデオ/7分/2005
Piano Sonata 鈴木聡子/ビデオ/3分/2004
Landed 土屋貴史/ビデオ/15分/2004
ANONYMOUS THE EGON/ビデオ/5分/2004
ライブ・パフォーマンス
050610-日常再編集、050612-日常再編集
大和川レコード/ビデオ/20分/2005