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2005/1/23,1/30
TEXT to SPEECH 呪文をかけられた映画
今回上映される作品は、機械的なナレーションが物語の核を為している。昨今のビジュアル(エフェクト)隆盛の反動からか、若手作家からも文字や声による語りへの指向が見られるようになった。ただし、思わせぶりなセリフや過剰にデザインされた字幕に食傷しているきらいもあり、彼らが採用したたのはコンピュータのソフトで機械合成された声によるナレーションである。抑揚のない、音節ごとに分解されて、少しだけ聞いている人を苛立たせる、例の声である。
『眠休遊怠詩』で流れるテクストは惰眠を貪る男の独白。あまり生々しく見せない為の配慮か、 あるいはディスコミュニケーションの演出か、ここでも平板なイントネーションでの合成音声が生きる。森見登美彦「太陽の搭」を彷彿させる京都市左京区の青春。『RUSH』は、東南アジアの"ある国"の印象を語った日本人のアンケートをコンピュータが読み上げる。前後に挿入された現地ロケの映像が非常に具体的であるため、読み上げられた意見がもっともなものに感じる点が可笑しくてまた怖くもある。あえて「良くできたルポルタージュ」から逸脱している作品。音声は出ないが『休憩』はテクストを扱った実験映画の傑作。今回の様に作品の間にあることで機能するパフォーマンス的な要素を持つ。最後に、イメージフォーラム・フェスティバル2004一般公募部門大賞作品『TEXTISM』を中心に同じコンセプトの3作をまとめた。主役であるテクストが画面に配置され、MACが読み上げる英語ナレーションやチラリと効果的に挿入されたCGが、人間のもつ陰の部分を淡々と描く。"読者"である私たちの想像力が入り込む余地をあらかじめ残しながら、映像は進む。どこかユーモラスなのがとても奇異であり、平林勇という作家の輪郭を感じさせる。(澤隆志)

作品コメント
眠休遊怠詩●「毎日毎日、ジャムパンばかり食うておる。」
己自身に対する絶望と
他者との関係を自ら拒絶する孤独の中、
だらだらと運動を繰り返す。
それは、ミニマルミュージックのごとき、深い陶酔と、
そして、不快な夢の始まりだった。(松本健一)
RUSH●遠く離れた異国の、様々な街の日常風景と、そこで暮らす人々へのインタビュー映像によってこの作品は構成されています。映像には日本の人々によるこれらの国へのイメージから生れた「物語」がナレーションとして挿入されており、コンピュータが朗読しています。日本の側の視点と異国の映像との対比は非常に興味深いといえるでしょう。(井内雅倫)
休憩●この作品の対象はじつにそっけない。しかしながら、そのそっけない対象を使って見事な効果をあげているこの作品のコンセプトは実に心憎い。「見せる」ということがこの作品ののかに巧みにとりこまれているのである。(かわなかのぶひろ)
PENIS, COCHROACH, TEXTISM●今回の3本の作品はテキストを柱に構成した映像です。実はこれらの作品は、最初に映像を完璧に作ってしまってから、全く白紙の状態から物語を考えています。テキストを柱にしていると言いつつ、本当はかなり強固に確信犯的に映像で基礎部分を作っているため、ある種、身勝手に書いたテキストでも、柱に見えるのかもしれません。(平林勇)
眠休遊怠詩
RUSH
休憩
受付
一般900円/会員600円

■上映作品
眠休遊怠詩 松本健一/9分/ビデオ/2004
RUSH 井内雅倫ビデオ/ 31分/2004
休憩 谷川俊太郎/16ミリ/3分/1977
PENIS 平林勇/ビデオ/3分/2002
COCHROACH 平林勇/ビデオ/2分/2002
TEXTISM 平林勇/ビデオ/11分/2003