イントロダクション
イスラエル出身で現在はアメリカで制作を行っているリオル・シャムリッツは、長編劇映画の他、実験的な短編作品やドキュメンタリーなど、様々なタイプの作品を作り続けている。民族、人種、ジェンダーなど、作家自身のアイデンティティも内包したテーマを掲げつつ、物語の解体とスタイルの実験を通じて独自の文体を追求する作品群はオーバーハウゼン国際短編映画祭やベルリン国際映画祭フォーラム部門などで上映され、高い評価を受けている。今回は近年制作された短編作品の上映とティーチインを開催、彼の作品をまとめて見られる貴重な機会をお見逃しなく。
上映作品(5作品/68分)
フェティッシュパピーの解放!(Fetish Puppies Break Free!)/デジタル/14分/2019
ザ・ナイト(The Night)/デジタル/7分/2015
野生の愛(L'amour Sauvage)/デジタル/26分/2014
映画の現在(The Present of Cinema)/デジタル/7分/2013
ポート・サイド、サンタ・クルス、サルマド・カシャニ(Port Saïd, Santa Cruz, Sarmad Kashani)/デジタル/14分/2022
※上映後にはリオル・シャムリッツによるティーチインあり。
作品コメント
フェティッシュパピーの解放!(Fetish Puppies Break Free!)
1934年のベルリン。白人ドイツ人と結婚した黒人ユダヤ人のもとに、国外逃亡を勧める女が訪れる。マーク・ザッカーバーグ風の "科学者"によって復活した性的なゴーレムを描いたドイツ表現主義映画の上映が、未来から来た男の訪問によって中断される。
ザ・ナイト(The Night)
アルディのレジに向かう前にいた男の安い白いスポーツソックスで、あなたを思い出した。
野生の愛(L'amour Sauvage)
失われた愛、失われた芸術的共同作業、つかの間の訪れの中で二人は一晩を過ごす。
映画の現在(The Present of Cinema)
入れ子状態が続いていく! 2013年オーバーハウゼン国際短編映画祭の「映画の未来」展の委嘱作品。
ポート・サイド、サンタ・クルス、サルマド・カシャニ(Port Saïd, Santa Cruz, Sarmad Kashani)
2021年の春、私は2つのリサーチ・プロジェクトに取りつかれていた。ひとつは1880年代に生き、作中で投影されていた人物に関するもの、もうひとつは生まれた時に閉じ込められた自己から抜け出すことのできた17世紀の詩人の物語だ。
リオル・シャムリッツ
プロフィール
東地中海のアシュケロンに生まれたシャムリッツは、19歳で軍隊をやめたのち、Hi8で映画制作を始め、アルゴリズムで操作された音楽や集団的なアート出版物の実験を始めた。ベルリンで10年間暮らした後、現在はカリフォルニアを拠点にしている。
シャムリッツの作品には、長編のインディペンデント/実験的劇映画、数多くの短編実験的劇映画、エッセイやドキュメンタリー映画などがある。作品は、ベルリン国際映画祭(2010年、2013年、2015年)、ロカルノ国際映画祭、サラエボ国際映画祭、MoMA's New Directors / New Films、BAFICI、Frameline、MixNYC、トリノ国際映画祭、アウトフェスト・ロサンゼルスで紹介され、KWベルリン、韓国MMCA、NGVオーストラリアなど多くの会場や映画祭で展示された。オーバーハウゼン国際短編映画祭(2013年、2014年、2015年)で賞を受賞し、テッサロニキ国際映画祭(2012年)、アルス・インディペンデント・カトヴィツェ(2012年)、ステーキシネマ・ソウル(2021年)、ベルリン芸術映画祭(2015年)などで回顧展を実施。映画エッセイ、短編ドキュメンタリー、劇映画に加え、何十本ものポエトリー・ビデオを制作している。詩人たちから直接依頼されたものもあれば、トロントのグリフィン・ポエトリー・プライズから依頼されたものもある。代表例には、オーシャン・ヴオン、ダグラス・カーニー、ユスフ・コムニャカ、ヘザー・マクヒュー、デズモン・オメガ・フェア、アイダ・リモンなどの詩人による朗読が含まれる。
2015年から2017年にかけては、ロサンゼルスのハイランドパークにあるPAMパフォーマンス・スペース、2018年からはメキシコのチワワにあるプロジェクト・スペース・フェスティバル・フアレスで、映画、パフォーマンス、レジデンシーをキュレーションしている。2023年、エルベ・トラカルとネハ・チョクシとの共同編集で雑誌「Mimesis - for Film as Performance」を創刊。