2019年3月に亡くなったレズビアン・フェミニスト映像作家の先駆者、バーバラ・ハマーを偲ぶ特集上映。代表作であり、ベルリン国際映画祭、マドリッド女性監督映画祭などで受賞した『ナイトレイト・キス』に加え、『サンクタス』、『テンダー・フィクションズ』を2プログラムで上映します。
3月31日には(水)にはシアター・イメージフォーラムのプログラムとして、「フェミニスト・クィア映画月間:バーバラ・ハマー」と題して、日本初公開作4本を上映します。あわせてご覧ください。
上映プログラム
Aプログラム
サンクタス 16ミリ/19分/1990
ナイトレイト・キス 16ミリ/67分/1993
Bプログラム
テンダー・フィクションズ 16ミリ/58分/1995
作品紹介
サンクタス
J・Sワトソン博士と彼の同僚が撮影した人体のX線写真を素材に、再撮影によってさまざまに合成し着色した動く骸骨の映像。フィルムという物質のもろさと人間存在という生命のはかなさを、時にユーモラスに、時に痛ましいほどに伝えてくる。これはまさに、免疫不全という危機に陥った人間の体に捧げるレクイエムである。
ナイトレイト・キス
現代のレズビアンやゲイ、4組のカップルの愛の光景とともに、歴史の表面から抹殺されてきたレズビアン・ゲイカルチャーの歴史がよみがえる。1930年代のアメリカ各地や、ナチス支配下で強制収容所を体験した同性愛者たちの証言とともに、アメリカ最初のゲイ映画『ソドムの運命』(1933年、J・Sワトソン、M・ウェーバー監督)と1930年代のドイツの演劇や記録映画などによって、性をめぐる価値観を根底から問い返す衝撃的ドキュメンタリー。93年ベルリン国際映画祭北極熊賞、マドリッド女性監督映画祭ベストドキュメンタリー賞などを受賞。
テンダー・フィクションズ
シャーリー・テンプルをめざして歌や踊りに明け暮れた幼少期、ウクライナからの移民だった祖母、両親のなれそめ、バイクでの世界一周旅行、結婚と離婚、レズビアンという概念との出会い、恋人のフローリーとドメスティック・パートナーとして登録したこと、母親の遺骨を空から撒いたこと、こうした人生の記憶の断片が時間軸や物語性とは無関係に独特のリズムでモンタージュされていく。エレーヌ・シクス−、トリン・T・ミンハ、バーバラ・スミス、オードリー・ロードといったフェミニストやレズビアンの理論家たちとのテキストを引用しつつ、「自伝」という形式を取りながら「自伝とは何か」という問題を考察するメタ・フィクティブな作品となっている。
バーバラ・ハマー
1939年、カリフォルニア州ハリウッド生まれ。60年代の終わり頃から8ミリフィルムで映画を撮り始める。以後、レズビアン・フェミニズムと出会い、パーソナルな実験映像や社会的なメッセージの強いドキュメンタリーなど、50数本の映画、20数本のビデオ作品を制作する。1992年、初の長編ドキュメンタリー映画『ナイトレイト・キス』を発表。同性愛者の体験を、時代や国の違いを越えて縦横無尽に再構築したことの作品は好評を博し、1993年ベルリン国際映画祭、マドリッド女性監督映画祭ほか世界各地で多くの賞を受賞した。1995年には山形国際ドキュメンタリー映画祭の審査員長を務めた。2019年3月死去。