スコピオ・ライジング SCORPIO RISING
1963/カラー/29分/原案・監督・編集=ケネス・アンガー/音楽=リトル・ペギー・マーチ、他/撮影地=ブルックリン、マンハッタン/出演=ブルース・バイロン(スコピオ)、ジョニー・サビエンザ(トーラス)、フランク・カリーフィ(レオ)
●黒皮ジャケットへのフェティシズム。アンガーの生み出した恐ろしいほど美しく、美しいほどに恐ろしい最高傑作。聖なる革の服をまとったバイカー、スコピオの映像に、ヒトラー、ジェームス・ディーン、マーロン・ブランド、イエス・キリストなどのショットが挿入される。オートバイの爆音、赤いテールランプのきらめきの中に60年代ポップスが、次から次へと繰り出される。この魅惑的なイメージの万華鏡はその後、『イージー・ライダー』など様々な亜流を生み出し、イメージと音楽のコラージュはミュージック・ビデオの原型と言われる。ロサンゼルス初上映の際にはそのスキャンダラスなイメージのため警察により中止を余儀なくされ、アメリカ・ナチス党からは訴訟をおこされた。
アンガーは語る。「アメリカのモーターサイクリストの神話の、《ハイ》な観点である……クロームのタナトス、ブラックレザーと破れたジーンズ。アイロニカルなアプローチこそ私の物の見方であり、この世に対する見解だ。私はアーティストなのだから『スコピオ・ライジング』ではただ、当時のある現象を観察しているだけだ」。

K.K.K. KUSTOM KAR KOMMANDOS
1965/カラー/3.5分/原案・監督・編集=ケネス・アンガー/音楽=ザ・パリス・シスターズ/出演=サンディー・トレント(車をカスタマイズする若者)
●若い男とその恋人である改造マシーンの物語。タイトなジーンズの男がメタル・クロームのマシーンを柔らかいパフで磨く姿を、ザ・パリ・シスターズの吐息に合わせてあまりにも甘美に描き上げる。テレビCMのお手本としても有名。

我が悪魔の兄弟の呪文
INVOCATION OF MY DEMON BROTHER

1969/カラー/11分/原案・監督・撮影・編集=ケネス・アンガー/音楽=ミック・ジャガー/撮影地=サンフランシスコ/出演=スピード・ハッカー(杖使い)、レノール・キャンデル(女執事)、ウィリアム・ボデル(執事)、ケネス・アンガー(マグス)、ボビー・ボーソレイユ(ルシファー)
●悪魔崇拝の儀式、ヘルス・エンジェルス、ベトナム戦争、男色セックスなどが悪夢のようなイメージとしてコラージュされた、魔王ルシファーを呼び起こす魔術的作品。シンセサイザーの音楽はミック・ジャガーが自ら演奏。

プース・モーメント PUCE MOMENT
1949/カラー/6.5分/原案・監督・撮影・編集=ケネス・アンガー/音楽=ジョナサン・ハルパー/撮影地=ハリウッド/出演=イヴォンヌ・マルキス(スター)
●古き良き20年代のハリウッド・スターの午後のひととき。衣装合わせのようにチェンジされてゆくサテン・ドレスの煌めき。サイケデリックな音楽とともに、アンガーの幼少時代のデリケートでエレガントな憧れの世界が描かれる。

ルシファー・ライジング LUCIFER RISING
1980/カラー/29分/原案・監督・編集=ケネス・アンガー/撮影=ミカエル・クーパー/音楽=ボビー・ボーソレイユ&フリーダム・オーケストラ/撮影地=エジプト、イギリス、ドイツ、アメリカ、他/出演=ミリアム・ギブリル(イシス)、ドナルド・キャメル(オシリス)、ヘイデン・クーツ(アデプト)、ケネス・アンガー(マグス)、マリアンヌ・フェイスフル(リリス)
●フィルムの盗難、キャストの変更、制作資金の枯渇など様々な制作過程における困難、そして様々なヴァージョンが発表された末、完成されたアンガーの現時点における最新作。ルシファーを堕天使と見なすキリスト教に対し、アンガーは彼を「美しい光の運搬人」であり、「宇宙のトリック・スター」としてその復活を描く。世界のあらゆるエキゾチックな場所を映し出し、不思議で奇妙な世界に対する新たなビジョンを見せる。この映画は魔術的神秘家アレイスター・クロウリーに捧げられている。音楽はシャロン・テイト殺人事件のマンソン一家の死刑囚ボビー・ボーソレイユにより刑務所の中で録音。エジプトの女神リリスとして登場する歌手のマリアンヌ・フェイスフルは語る「この映画はヘロインを喫って三回見なくてはとても理解できないわ」。

花火 FIREWORKS
1947/モノクロ/15分/原案・監督・編集=ケネス・アンガー/音楽=レスピーギ/撮影地=ハリウッド/出演=ケネス・アンガー(ドリーマー)、ゴードン・グレイ(船員1)、ビル・セルツァー(船員2)
●現存するアンガーの最も古い作品。アンガー17歳の時、両親の留守中の三晩の間に自宅で作られたゲイ映画の古典。フィルムは海軍から、セットはコロンビアのスタジオから調達。アンガーの作品の中で最もビビッドで、ショッキングで、大胆にエロティックな作品。タイトルは、水兵のぺニスが打ち上げ花火に変わるクライマックスシーンに由来。水兵の一群に叩きのめされて腹わたが飛び出ることを夢想する若者をアンガー自ら演じている。「花火で私は、夢の打ち上げ花火をすべて放ったんだ」とアンガーは語る。
「魂の急所にすばやく触れる映画」……ジャン・コクトー
「最も刺激的な映画」……テネシー・ウィリアムス

ラビッツ・ムーン RABBIT'S MOON
1950, 78/カラー/8分/原案・監督・編集=ケネス・アンガー/音楽=アンディ・アーサー/撮影地=パリ/出演=アンドレ・スーベイラン(ピエロ)
●イタリアのコメディア・デラルテの「月に憧れるピエロ」と日本の「月の中の兎」の伝説から、届かぬものへのほろ苦い憧れを描いた美しいハーレクイン劇。1950年に撮ったこの作品をアンガーは20年後にロックンロールのサウンドトラックを加え、シュールな切り口とMTVにも通じる現代的な作品にした。「フィルムを作ることは、魔法をかけるようなものだ。」とアンガーは語る。

人造の水 EAUX D'ARTIFICE
1953/カラー/13分/原案・監督・編集=ケネス・アンガー/音楽=ビバルディ「四季」/撮影地=チボリ(イタリア)/出演=カーミラ・サルバトレリ
●宝石と羽根で飾り立てたロココ調の衣装をまとった女性がチボリ公園の噴水群の中を行き来する内に水に溶け込んでしまう幻想的な作品。映画全体が水の美しいメタファーとなっている。昼間の公園で撮影、ブルーのフィルターで月夜の妖しい景観を作りだしている。コスチュームのデザインは、彼が幼い頃よく好んで着た、祖母によるもの。

快楽殿の創造
INAUGURATION OF THE PLEASURE DOME
1954, 1956, 1958, 1960, 1978/カラー/38分/原案・監督・編集=ケネス・アンガー/音楽=E.L.O./撮影地=ハリウッド/出演=サムソン・ド・ブリエ(シバの女王、オシリス、猛獣)、カメレオン(スカーレット、ウーマン、カーリー)、ジョアン・ホイットニー(アフロディーテ)、アナイス・ニン(アスターテ)
●20数年をかけて完成されたアレイスター・クロウリーの呪術的仮装儀式を描くサイケデリック・ムービーの傑作。暗い黄色、鮮やかな赤等の濃厚な色彩の対比のイメージから次第に魔女の酒による幻覚的な昂揚へと導かれてゆく。繰り返し改訂がなされ多数のヴァージョンがあるが、三台の多面スクリーンで上映されたこともあった。今回のヴァージョンでは五重焼き付けなどの複雑な技術が施されている最終版。ヨーロッパ各地を転々として制作され、ロサンゼルスに帰り最終的な撮影が行われ、75年に最終的なサウンドが付けられた。アスターテ役の高名な作家アナイス・ニンの、エキゾチックなパフォーマンスも見物だ。


上映作品解説バイオグラフィ



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