クラブゼロ
Club Zero
監督・脚本:ジェシカ・ハウスナー(『リトル・ジョー』『ルルドの泉で』)、脚本:ジェラルディン・バジャール、撮影:マルティン・ゲシュラハト(『リトル・ジョー』)、編集:カリーナ・レスラー、作曲:マーカス・ビンダー、衣装:ターニャ・ハウスナー、出演:ミア・ワシコウスカ(『アリス・イン・ワンダーランド』)他
2023年カンヌ国際映画祭コンペティション部門出品/2023年ヨーロッパ映画賞最優秀音楽賞受賞作品/110分/オーストリア・イギリス・ドイツ・フランス・デンマーク・カタール/2023年/配給:クロックワークス 2024年公開予定/*日本語字幕付き English with Japanese subtitles
“クラブゼロへ ようこそ”。ホラー?喜劇?ジェシカ・ハウスナーの人間社会に対する透徹した視線が際立つ、不安に満ちたサタイア。
裕福なインターナショナル・スクールに栄養学のノヴァク先生が新任としてやってくる。“意識的に食べる”ことの大事さを、優秀だが無垢な生徒たちに教えこむ先生。大量消費主義がいかに地球と人間の体を破壊しているか。だからこそと“食べる量を少なくすること”を勧められた生徒たち。両親たちの心配をよそにその教えにのめり込んで行く…。ミヒャエル・ハネケに師事した筋金入りの真っ黒なユーモアで観るものを蹂躙するハウスナーの野心に満ちた作品。
デビルズ・バス(仮題)
Devil’s Bath
監督:ヴェロニカ・フランツ(『グッドナイト・マミー』)+セヴリン・フィアラ、製作:ウルリヒ・ザイドル(『サファリ』、『パラダイス3部作』)、撮影:マルティン・ゲシュラハト(『リトル・ジョー』『クラブゼロ』)、編集:ミヒャエル・パルム、音楽:Soap & Skin(アーニャ・プラシュク)衣装:ターニャ・ハウスナー(『クラブゼロ』)、出演:アーニャ・プラシュク、ダーヴィド・シャイト、マリア・ホーフステッター(『パラダイス:神』)/121分/オーストリア・ドイツ/2024年/配給:クロックワークス 2025年公開予定/*日本語字幕付き German with Japanese subtitles
“私の狂った妄想が世界に毒を盛ったのです…。”声なきまま歴史に葬られてきた女たちの視線を通し、「暗黒の中世」の血塗られたタブーを限りなくダークに描くグロテスクなサイコドラマ。
1750年、オーストリア北部。処刑された女が、見せしめのために断崖に晒されている。それを哀れみの目で見つめる信心深いアグネス。新婚の彼女は夫との関係に悩んでいた。農村の重労働と周りからの視線に押し潰され、彼女は呪物に頼り、やがて現世から幽離していく。追い詰められた彼女に残された出口とは…?鬼才・ウルリヒ・ザイドルの脚本家でもあるヴェロニカ・フランツの長編最新作。2024年ベルリン国際映画祭銀熊賞(芸術貢献賞)受賞。
我来たり、我見たり、我勝利せり(仮題)
Veni Vidi Vici
監督:ダニエル・へースル+ユリア・ニーマン、製作:ウルリヒ・ザイドル(『サファリ』、『パラダイス3部作』)、撮影:ゲラルト・ケルクレッツ、音楽:マヌエル・リーグラー、出演:ローレンス・ルップ、ウルシナ・ラルディ(『白いリボン』)、オリビア・ゴシュラー他/86分/オーストリア/2024年/2024年サンダンス映画祭出品作品/配給:ハーク 2025年公開予定/*日本語字幕付き German with Japanese and English subtitles
“破壊こそクリエイティブ!” 資本主義の終末的世界を極度にシニカルなユーモアで描き、本年のサンダンス映画祭で話題を呼んだセンセーショナルな問題作。
起業家として億万長者になり上がり、幸福な充実した人生を送るメイナード家。一家の長アモンは、趣味のハンティングに情熱を傾けている。アモンがハントするのは動物ではない。莫大な富を抱えた一家は何だって狩る事が許されるのだ…。「ユーモアは危険な時に最高に力を発揮する」という信念を持つ気鋭の監督デュオが、観る者に笑いと怒りを同時に発現させる。
無用物
Matter Out of Place
監督・撮影:ニコラウス・ゲイハルター、編集:サミラ・ガレマニ、ミヒャエル・パルム/105分/オーストリア/2022年/2023年ロカルノ国際映画祭“緑の豹”賞受賞作品/*日本語字幕付き German with Japanese and English subtitles
集め、切り刻み、燃やし、埋める。膨大に生まれる廃棄物をコントロールしようとする、人類の終わりの見えないシジフォス的営み。大量ゴミ処理現場を巨大なスケールで捉えるニコラウス・ゲイハルターのドキュメンタリー最新作。
大ヒット作品『いのちの食べかた』でお馴染みとなったタブロー的ショットの配置で、スイス・アルプスの山頂、ギリシャやアルバニアの海辺、オーストリアの巨大焼却炉、モルディブの海底やネヴァダの砂漠など、普段人の目の届かない場所で営まれている大量のゴミ処理の様子を、オブザベーショナル・ドキュメンタリーの巨匠ゲイハルターが記録していく。その環境学的・人類学的なアプローチが高い評価を得てロカルノ国際映画祭では“緑の豹”賞を受賞した。
ウィーン10区、ファヴォリーテン
Favoriten
監督・脚本:ルート・ベッカーマン、脚本:エリーザベト・メナッス、撮影:ヨハネス・ハンメル/118分/オーストリア/2024年/2024年ベルリン国際映画祭平和賞受賞作品/*日本語字幕付き German with Japanese and English subtitles
「移民のヨーロッパ」、その最前線の教育現場。生徒たち(と担任の先生)の日々の冒険、失敗、闘い、成功が、子供の目線で見事に活写された、子供時代の讃歌とも言える心打つドキュメンタリー。
伝統的な労働者の街として知られているウィーンのファヴォリーテン地区。そこは今や移民とアイデンティティの間で揺れる現代ヨーロッパの鏡とも言える状況となっている。ファヴォリーテン地区にある小学校の生徒のほぼ全員が移民の子であり、様々な民族的・文化的背景を持った子供たちが同じクラスで学んでいる。公共教育の「危機的状況」が叫ばれるその最前線で実際に何が起きているのか。ベルリンを始め数々の映画祭で受賞経歴のあるドキュメンタリーの巨匠ルース・ベッカーマンが、そこに通う子供たちを3年かけてその成長を追いかける。
ベアトリックス
Beatrix
監督・編集:ミレーナ・チェルノフスキー、リーリト・クラクスナー、撮影:アントニア・デ・ラ・ルッツ・カシック、出演:エーファ・ゾマー、カタリナ・ファーンライトナー他
95分/オーストリア/2021年/2021年FIDマルセイユ映画祭俳優賞受賞/*日本語字幕付き German with Japanese and English subtitles
植物に水やりをし、お風呂に入り、ボールで遊び、電話をし、友だちを呼ぶ。時々鏡で自分のイメージを確認するベアトリクス。女性の身体とそのイメージ、映画のナラティブについての親密な考察。
ある夏、とある家に一人で過ごすことになり暇をもてあますベアトリックスの日々が16ミリフィルムで端正に捉えられる。あらゆる期待から解放されたベアトリクスの姿をいかなるフレームにも閉じ込めようとしない監督たちのアプローチは、初期のシャンタル・アケルマンの作品にも通じる。植物に水やりをし、お風呂に入り、ボールで遊び、電話をし、友だちを呼ぶ。新鋭監督デュオによるデビュー作。
[特別上映] ミダースの蟻
Midas’ Ants
監督:エドガー・ホーネットシュレーガー(『Aun 阿吽』)/75分/オーストリア/2022年/*日本語字幕付き Italian with Japanese subtitles
ドクメンタへの出品など、アーティストとしても知られるエドガー・ホーネットシュレーガーの最新映画作品。人間の自然に対する考え方が変容する歴史的瞬間を味わうアヴァンギャルドなロードムービー。
ローマの近くには、ティレニア海を見下ろす古城がある。不機嫌な城主がボロ車から愛国的スローガンを喧伝する一方で、地元の司祭は自分の理解を超えるものは何でも撃ち殺す。移民の聖歌隊に混じって農民たちはヘーゲル的思考にふけり、哲学者のロバのバルタザールとその友人が人間の愚かさについて推察する…。