いまだ無限の可能性を秘めたアフリカ大陸
その裏側を旅する傑作ドキュメンタリーを一挙上映!!


かつて奴隷貿易の拠点とされ、西欧による植民地支配を受けてきたアフリカ。20世気の独立国家成立後も、現地の独裁者やアメリカ・フランスといった大国が癒着して、開発援助資金と天然資源をむさぼり、現在に至るまで収奪と略奪の地となっている。美しい自然や豊富な資源をかかえ、無尽蔵の可能性を秘めながら、内戦や貧困に悩み続けるアフリカ。本特集では、そのような歴史から立ち直ろうとするアフリカの姿を、3人の優れたドキュメンタリー作家がそれぞれの「旅」を通してフィルムに焼き付けている。いずれも劇場初公開となる珠玉のドキュメンタリー集である。

[上映作品]

『アフリカ、痛みはいかがですか?』
監督:レイモン・ドゥパルドン/1996/165分/フランス

ピューリッツァー賞受賞の世界的写真家が描いた現代アフリカのポートレート
ピューリッツァー賞カメラマン、レイモンド・ドゥパルドンは、アフリカ縦断の旅で1990年代前半の アフリカの姿を如実にカメラに捉えた。喜望峰とネルソン・マンデラのポートレートから始まり、ル ワンダの内戦に遭遇し、後輩したモガディシオを目の当たりにし、最後には穏やかな地中海に面した アレキサンドリアへと至る。



『7915キロ』
監督:ニコラウス・ゲイハルター/2009/100分/オーストリア

『いのちの食べかた』のゲイハルター監督が描く"パリ・ダカール・ラリー"の舞台裏
世界を代表する過酷なラリー・レース、ダカール・ラリー(通称:パリ・ダカ)。西欧が描く「未開の地・アフリカ」、現地人が描く「豊かな先進国・ヨーロッパ」というお互いの視線がスリリングに交錯する。ラリー車が残して行った無数の轍をたたえたサハラ砂漠の映像は、ブリューゲルの風景画のように崇高な美しさで撮影されている。




『コンゴ・リバー』
監督:ティエリー・ミシェル/2005/116分/ベルギー、フランス

コッポラ『地獄の黙示録』原作にも影響を与えたアフリカの大動脈"コンゴ河"をさかのぼる旅
世界有数の熱帯雨林地帯を流れるコンゴ河は、陸路の交通網が未開の国民にとって移動の大動脈である。ジョセフ・コンラッドの小説「闇の中」の舞台にもなったこの河。"眠り病"を媒介するツェツェバエ、激しい雷を伴なう嵐、愛国的民兵たちが唄う歌、今は廃墟と化している巨大な宮殿。地獄の淵にある国・コンゴで、人々は大河にいsがみつき、希望へ向かって立ち上がろうとしている。ベルリン映画祭最優秀ヨーロッパ・アート&エッセー作品賞・及びCICAE賞受賞。



[参考上映作品]

『ありのままの場所』
監督:トリン・T・ミンハ/1985/135分/セネガル・アメリカ

繊細なカメラワークで撮影された豊かなディテールを持つこの映画は、西アフリカ・セネガルの村人たちの日常生活のリズム、音、形象を通じて、見るものを感覚的で哲学的な旅へといざなう。ポスト・コロニアリズムの代表的思想家トリン・T・ミンハが贈る「空間の詩学」。




『オリ』
監督:ラケル・ガーバー/1989/93分/ブラジル

「オリ」とは、頭の意味、歴史・記憶に関する黒人の意識のこと。ブラジル黒人の闘争を背景に、そのルーツであるアフロ・アメリカン文化について考察する。




[上映スケジュール]


[公開記念トークショー]

[1]6月12日(土)
12:30『アフリカ、痛みはいかがですか?』上映前
16:00『7915キロ』上映前

ゲスト:大崎 敦司(おおさき あつし) 氏
学生時代、南アフリカの人種隔離政策(アパルトヘイト)に興味を持ち、アフリカに長期滞在。1990年に朝日新聞社に記者として入社、2000年から外報部に所属。2002年9月から2年間、サハラ砂漠以南のアフリカ48カ国を一人で担当するアフリカ特派員に。リベリアやコートジボワール、スーダンなどの内戦やイラク戦争を現場で取材。2004年9月から大阪本社・社会部に所属。2006年9月から福井県の敦賀支局長。アフリカを追い続けるジャーナリストや写真家の有志らと、アフリカの実情を写真や映像で伝えるグループ「SAMAFA」を2001年に発足させた。現在はフリージャーナリストとして、アフリカを知ってもらうために各地の学校などで講演活動を続けている。2009年6月現在、JICAの依頼でタンザニア政府委託のテレビ番組を制作した。


[2]6月20日(日)
12:30『コンゴ・リバー』上映前

ゲスト:内澤旬子(うちざわ・じゅんこ) 氏
1967年生まれ。緻密な画力と旺盛な行動力で、世界各国の図書館、トイレ、印刷所などの様々な「現場」を取材してきた。著書に『センセイの書斎』『世界屠畜紀行』『おやじがき 絶滅危惧種(レツドデータ)中年男性図鑑』、共著に『印刷に恋して』『「本」に恋して』(松田哲夫・文)『東方見便録』(斉藤政喜・文)などがある。